2003.02.20

キメラ抗体医薬インフリキシマブに対する中和抗体、クローン病の寛解期間を短縮か

 クローン病などの治療薬として用いられる抗体医薬、インフリキシマブ(商品名:レミケード)に対する中和抗体が生じたクローン病患者では、寛解期間が中和抗体が生じていない患者の半分近くにまで短縮していることがわかった。ただし、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)など免疫抑制作用を持つ薬を併用している場合は中和抗体の発生確率が有意に低く、研究グループは「クローン病患者をインフリキシマブで治療する際には、同時に免疫抑制療法を行うべき」と提言している。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2月13日号に掲載された。

 クローン病は、厚生労働省の特定疾患(難病)指定を受けた消化管の炎症性疾患。好発年齢は10〜20歳代で男性に多く、広い範囲に起こる消化管粘膜の炎症や潰瘍のため、下痢や腹痛、発熱など様々な症状が生じる。わが国には、クローン病医療受給者証を交付された患者が2001年度で総計2万1061人おり、毎年1500人前後の増加がみられている。

 治療は栄養療法や食事療法が主体で、それでも症状が緩和されない場合は、薬物療法や外科療法が行われる。近年、クローン病の症状増悪に、サイトカインの腫瘍壊死因子(TNF)が深く関連していることが判明。TNFに対する抗体が、既存治療へ抵抗性のクローン病治療に用いられるようになった。インフリキシマブは、このTNFに対するヒト・マウスキメラ抗体で、わが国でも昨年5月から中等度〜重度の活動期クローン病患者と、外瘻があるクローン病患者への適応で発売されている。

 ただし、インフリキシマブにはマウス由来の抗体成分が含まれるため、それに対する抗体(中和抗体)がある確率で生じる。中和抗体を生じた患者では、投与に伴う早発性・遅発性の過敏反応が生じる確率が高いことがわかっている。

 ベルギーGasthuisberg大学病院内科のFilip Baert氏らは、インフリキシマブによる治療を受けるクローン病患者連続125人を追跡。中和抗体がどの程度の確率で生じるかや、中和抗体の存在が治療に与える影響などについて調べた。平均追跡期間は10カ月で、患者は平均3.9回のインフリキシマブ投与を受けた。

 その結果、中和抗体は61%の患者に生じ、既に報告されているように、中和抗体が生じた患者では過敏反応が生じやすいことが判明。さらに、中和抗体が生じた患者では、インフリキシマブによって導入された寛解期間が平均38.5日と、中和抗体が生じていない患者(平均65日)と比べ有意に寛解期間が短いことが明らかになった(p<0.001)。寛解期間は中和抗体の濃度(titer)と有意な相関があった。

 次に研究グループは、どのような患者で中和抗体が生じにくいかを検討した。すると、半数弱の患者はアザチオプリンやメトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用していたが、そうした患者では中和抗体の発生率が46%で、非併用者の75%より有意に低かった(p<0.01)。年齢や性別、疾患部位や喫煙の有無、ステロイドの併用の有無などは、中和抗体の発生率には無関係だったという。

 以上から研究グループは、「いったん中和抗体が生じると、副反応が起こりやすくなるだけでなく、寛解期間も短縮し得る」と結論。インフリキシマブを関節リウマチ治療に用いる場合は、中和抗体発生予防の意味も含めメトトレキサートを併用することになっているが、クローン病の場合も同様に、何らかの免疫抑制薬を併用すべきだとした。

 この論文のタイトルは、「Influence of Immunogenicity on the Long-Term Efficacy of Infliximab in Crohn's Disease」。アブストラクトは、こちらまで。

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