2003.02.19

血中の血管内皮前駆細胞数が心血管疾患リスクと相関

 血管形成の鍵細胞の一つ、「血管内皮前駆細胞」(EPC)が、心血管疾患のリスク軽減に役立っているとする新たな証拠が見付かった。45人の中年男性を対象とした検討で、血液中を遊走しているEPC数が、フラミンガム危険因子スコアで評価した心血管疾患リスクと強く相関していることがわかったためだ。再生医療の旗手として期待されているEPCだが、心血管疾患リスクとの相関が判明したのは初めてで、リスクマーカーとしての研究にも拍車がかかりそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2月13日号に掲載された。

 EPCは、神戸市などの出資で設立された先端医療センターの再生医療研究部長、浅原孝之氏らが、1997年に発見した骨髄由来の血管系前駆細胞(Science;275,964,1997)。ごく微量が血管内皮への分化能を保ったまま血液中を循環しており、血管新生が必要な部位に集まって、あたかも胎児における脈管形成のようなメカニズムで新生血管を作り出す。

 今回発表された研究は、米国国立心臓肺血液研究所(NHLBI)のJonathan M. Hill氏らが実施したもの。平均年齢50歳の健康な男性45人から採血し、末梢血中のEPC数と、年齢や血圧、血清脂質などから求めた心血管疾患リスク(フラミンガム・スコア)などとの関連を調べた。

 その結果、末梢血中のEPC数が多いほど、フラミンガム・スコアが有意に低くなることが判明(相関係数r=−0.47、p=0.001)。「高血圧」や「高脂血症」といった従来の危険因子の有無よりも、EPC数の方が、フラミンガム・スコアで評価した心血管疾患リスクと強い相関があった。さらに、心血管疾患リスクが高い人のEPCは、リスクが低い人よりも、老化した細胞の比率が高かった。

 この研究では、心血管疾患発症リスクをフラミンガム・スコアで評価しただけであり、実際のリスクをどの程度EPC数で予見できるかは前向き追跡研究を行わなければわからない。こうした限界はあるが、「健常男性では、EPC数が血管機能や累積的な心血管疾患リスクに対する代理的な生物学的マーカーになる可能性がある」と研究グループは結論。動脈硬化の進展には慢性炎症などによる“血管内皮の傷”が深く関与するとされるが、今回得られたデータは「こうした傷を修復するEPCが血中に十分無いと心血管疾患が進行する」との仮説を支持すると研究グループは強調している。

 この論文のタイトルは、「Circulating Endothelial Progenitor Cells, Vascular Function, and Cardiovascular Risk」。アブストラクトは、こちらまで。

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