2003.02.18

ACE阻害薬の心血管系イベント抑制作用が利尿薬に優る、併用薬の違いが影響か−−ANBP2試験より

 カルシウム(Ca)拮抗薬やβ遮断薬などを併用薬とした場合、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を第一選択とした方が、利尿薬を第一選択とするよりも心血管系イベント抑制作用が大きい傾向がある−−。こんな大規模臨床試験結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2月13日号に掲載された。オーストラリアで行われた「ANBP2」(Second Australian National Blood Pressure)試験(関連トピックス参照)グループのLindon M. H. Wing氏らの報告による。昨年12月に発表された「ALLHAT」研究(関連トピックス参照)とは、まさに正反対の結果だけに、今後議論を呼びそうだ。

 「ANBP2」試験は、第一選択薬として利尿薬とACE阻害薬のどちらが優れるかを比較する、一般医(GP)主導型の降圧薬臨床試験。65〜84歳の高血圧(収縮期血圧≧160mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg)6083人(平均72歳)を、利尿薬群(3039人)とACE阻害薬群(3044人)とに無作為に割り付けた。降圧目標は160/90mmHg未満で、割り付けられた降圧薬を忍容できた場合は、140/80mmHg未満までの降圧を試みた。

 オープンラベルで平均4.1年間追跡した結果、試験開始時に平均168/92mmHgだった血圧は、両群とも142/80mmHgまで低下。降圧度は試験期間を通じで常にほぼ同等だった。両群とも25%弱がCa拮抗薬、10%強がβ遮断薬、15%弱がアンジオテンシン2受容体拮抗薬を併用していた。

 評価項目の判定は、治療内容を盲検化された委員会が行った(PROBE法)。第一評価項目の「全心血管系イベントまたは全死亡」、「心血管系イベント初発または全死亡」、「全死亡」はいずれもACE阻害薬群で減少傾向を示したが、有意差とはならなかった。ただし「全心血管系イベントまたは全死亡」のACE阻害薬群における相対減少率11%のp値は0.05であり、きわめて有意に近かった。

 これらの評価項目を後解析(post-hoc)で男女別に見ると、男性では「全死亡」以外のハザード比がいずれも有意に17%減少していた(p=0.02)。女性では「全死亡」が利尿薬群で1%の増加を示したが、その他の評価項目のハザード比は全く同じだった。

 男女全体で検討しても、非致死的心血管系イベントはACE阻害薬群で14%有意に減少しており(p=0.03)、致死性・非致死性とも「心不全」はACE阻害薬群で減少傾向を示していた。ただし「脳卒中死」はACE阻害薬群で有意に(p=0.04)2倍近く増加していた(相対リスク1.91)。

 ACE阻害薬を基礎とする治療が男性で効果が高かったとの結果だが、その機序について、研究者らは「後解析ゆえに慎重に考える必要がある」とした上で、「男性では女性よりも相対的に心血管系リスクが高いため、『HOPE』試験で示されたようなACE阻害薬の有用性が強く出た」可能性などを指摘している。

 今回得られた試験結果は、「利尿薬による心血管系イベント抑制作用がACE阻害薬に優る」とする「ALLHAT」研究とは対照的に映る。ただし、両試験には対象患者層や試験設計上の違いがある。同号の論説(Editorial)では、米国Ochsner Clinic FoundationのEdward D. Frohlich氏が、主要な相違点について論じている。

 具体的には、1.「ALLHAT」研究の参加者には黒人が比較的多かった、2.「ALLHAT」研究の方が到達血圧が低かった、3.「ANBP2」試験では心血管系危険因子(糖尿病、喫煙や冠動脈疾患など)を有する例が少なかった−−などが挙げられており、Frohlich氏は、これらの違いが結果に影響を与えた可能性を指摘している。また「ALLHAT」研究とは異なり、「ANBP2」試験ではACE阻害薬とCa拮抗薬が併用できるという、試験設計上の違いもある。

 こうした相違点がどの程度結果に影響したかは今後の議論待ちだが、今年改訂が予定されている米国合同委員会(JNC)の高血圧診断・治療ガイドライン(JNC-7)に、これらの大規模臨床試験結果がどのような形で反映されるかに注目したい。

 この論文のタイトルは、「A Comparison of Outcomes with Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Diuretics for Hypertension in the Elderly」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

■関連トピックス■
◆2002.6.28 「SCOPE」「PROGRESS」痴呆サブ解析など注目の臨床試験結果が発表−Large Clinical Trialより
◆2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

■参考トピックス■
◆2002.6.25 「降圧薬が止められる」条件、年齢と収縮期血圧、服薬数が鍵

※編集部注
 「ANBP2」試験は、オーストラリア国立健康・医療研究カウンシル(National Health and Medical Research Council)と、オーストラリアMSD社がスポンサーとなって行われています。「ALLHAT」研究のスポンサーは米国心臓肺血液研究所(NHLBI)で、試験薬提供以外のサポートを米国Pfizer社から受けています。

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