2003.02.12

【日本胃癌学会速報】 胃癌治療へのパス導入で1日当たりの請求点数増、一人当たり医療費は削減

 胃癌の術後管理にクリニカルパス(標準治療過程、CP)を導入することで、患者一人当たりの診療報酬を削減でき、かつ1ベッド1日当たりの請求点数を増加できる−−。CPにここまではっきりした経済的効果があることが、2月7日のパネルディスカッション「Clinical Pathによる胃癌治療の進歩」で報告された。日本医科大学第1外科の事例で、同科の木山輝郎氏らが発表した。

 近年、わが国でも、急性期医療へのCP導入が多くの医療機関で行われるようになった。CPを導入することで、これまで主治医ごとのばらつきが大きかった「入院から退院までの治療方針」が標準化され、結果として平均在院日数の短縮が達成されている。しかし、この「在院日数の短縮」以外に、CPにどのような効果があるかについては、まだ評価が定まっていないのが現状だ。

 そこで木山氏らは、保険請求の総点数に加え、診療行為が薬剤、手術、検査などに分類記載されている診療報酬明細書(レセプト)に着目。胃切除術にCPを導入している病棟(東館病棟)と、CPを導入していない病棟(本館病棟)とで、胃切除患者のレセプトを比較してCPの診療報酬への効果を検討した。

 評価対象は、2001年1月から12月にかけて、同大学附属病院で胃切除術を受けた76人。うち44人は東館病棟でCPによる術後管理、32人は本館病棟で通常の術後管理を受けた。術後管理のCPは14日間のもので、術後1日目に座位、2日目に尿管抜去、4日目から経口水分摂取を開始。5日目から流動食を開始し(2日ごとに三分粥、五分粥、全粥へと進む)、10日目以降は通常食という流れだ。服薬指導や栄養指導もCPに折り込んだ。

 その結果、術前の検査入院期間も含んだ平均在院期間は、CP群が27.1日、対照群が35.4日で、CPの導入で在院期間をおよそ8日間短縮できることが判明。平均医療費はCP群が14万5290点、対照群が16万4568点となり、一人当たりの医療費はCP群でおよそ2万点(約12%)安くなった。診療行為別にみると、入院料(45%削減)や薬剤費(19%削減)、検査費(8%削減)に対するCP導入の効果が大きいことがわかった。薬剤管理指導や栄養食事指導はCP群の9割弱に行われたが、対照群では、前者は1割、後者は4割の患者に実施されるに留まった。

 次に木山氏らは、病棟単位での年間平均病床稼動数や、1ベッド当たりの保険請求点数などを評価した。すると、CPを導入した東館病棟では、胃切除患者による年間平均病床稼動数(延べ入院日数を365で除したもの)が3.27となり、本館病棟の3.10を5%上回ることが判明。1ベッド当たりの手術件数が30%多く、1ベッド1日当たりの請求点数は15%高いことが明らかになった。

 木山氏らは「CP導入により服薬・栄養指導が9割弱の胃切除後患者に行われるなど、チーム医療により医療資源が効率良く運用されたことで、一人当たりの医療費が12%削減。同時に1ベッド1日当たりの医療収入が15%増加した」と総括。外科の場合は総請求点数に占める手術費の割合が高いことを考えると、在院日数を短縮して病床稼働率を高めることが、患者負担削減だけでなく医療機関の収入増にもつながることを強調した。

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