2003.01.28

喘息治療薬「セレベント」の大規模市販後試験が米で中断、ドクターレターが発出

 米国食品医薬品局(FDA)は1月23日、米国で行われていた喘息治療薬「セレベント」(一般名:キシナホ酸サルメテロール)の大規模試験が中断されたことを発表した。中間解析からは、1次評価項目に有意差はないものの、同薬の使用が命に関わる喘息発作の増加に関与している恐れがあることがわかったという。この試験中止を受け、発売元の英国GlaxoSmithKline(GSK)社は同日付けでドクターレター(Dear Healthcare Professional letter)を発出、「吸入ステロイドの代替薬ではない」「症状の不安定な患者には使わない」などの留意点に対する注意を改めて喚起した。

 キシナホ酸サルメテロールは、気管支拡張効果が長時間持続するタイプ(長時間作動型)のβ2刺激薬。従来の短時間作動型β2刺激薬が発作時の治療薬(リリーバー)、であったのに対し、キシナホ酸サルメテロールは長期管理薬(コントローラー)と位置付けられている。わが国では昨年6月に発売され(関連トピックス参照)、昨年12月までの約6カ月で薬価ベースで13億円の売上げがあり、在庫分を考慮しなければ、患者数に換算して少なくとも5万人以上に処方されたとみられる。

 今回中断された臨床試験「SMART」(Serevent Multi-center Asthma Research Trial)は、1996年7月に米国でスタートしたもの。同薬は米国で喘息治療薬として1994年に承認されており、市販後の安全性評価試験という位置付けだった。試験計画では、喘息患者6万人を無作為に2群に割り付け、通常の喘息治療に加え、一方にキシナホ酸サルメテロール、他方にプラセボを処方して26週間追跡し、有効性や安全性を比較する予定だった。

 しかし、患者登録が予想よりも進まず、2002年末までの登録患者数は2万5858人と当初予定の4割強に留まった。その段階で中間解析を行ったところ、1次評価項目である挿管、人工呼吸器導入が必要になるような致死的緊急事態発生率は、両群共に発生の絶対数が少なく、キシナホ酸サルメテロール群の方が多い傾向はあるものの両群に有意差はみられなかった。

サブ解析で「黒人」「吸入ステロイド薬非併用者」に喘息関連イベント増加が判明

 次に研究グループは、人種や元々受けていた喘息治療別などでのサブ解析を実施した。すると、全体の71%を占める白人では致死的緊急事態発生率や喘息関連イベントなどに有意差はなかったが、黒人(全体の17%)では、致死的緊急事態発生率や死亡を含む喘息関連イベントが、キシナホ酸サルメテロール群で有意に多いことが明らかになった。

 また、喘息治療として吸入ステロイド薬を使用していたか否かでも違いが現れた。吸入ステロイド薬を併用していた人(全体の47%、白人の50%、黒人の38%)では、致死的緊急事態発生率や喘息関連イベントの発生数に、キシナホ酸サルメテロール群とプラセボ群とで有意差がなかった。ところが、吸入ステロイド薬を併用していなかった人では、喘息関連死が有意に多いことがわかった。

 この結果を受け、GSK社はドクターレターを発出。「これ以上患者登録数を増やしても、現在の試験設計では中間解析で示唆された疑問点に答えるデータは得られない」との理由で試験を早期中断することを説明し、以下の7点について、改めて注意を喚起した。

 ◎現在キシナホ酸サルメテロールを使用している患者は、自己判断で中止せず医師に相談する
 ◎キシナホ酸サルメテロールは吸入ステロイド薬の代替薬ではないので、キシナホ酸サルメテロールの吸入を開始後も吸入ステロイド薬は中断・減量しない
 ◎発作重積状態や急激な悪化状態の患者には投与しない
 ◎急性発作の治療には用いてはならない
 ◎キシナホ酸サルメテロールを使用中の患者は、リリーバーとして短時間作用型β2刺激薬を必ず併用する
 ◎短時間作用型β2刺激薬の使用量増加は喘息増悪の徴候である
 ◎喘息増悪の徴候を患者に教え、徴候が現れた場合はすぐに医療機関を受診するよう促す

 GSK社は今後、「SMART」試験の詳細な解析を進め、得られたデータに関し、FDAと添付文書の改訂を視野に入れた協議を続ける。さらに、「SMART」試験で白人との差異が示唆された、黒人を対象とする追加試験の実施についても協議する予定だ。

日本人と他人種との同一性示す十分なデータなし、医療機関への情報提供は未定

 GSK社の日本法人で、日本で「セレベント」を販売するグラクソ・スミスクラインは「現時点では、SMART試験の中断や中間解析結果などについて、日本の医療機関に情報提供するかどうかは決まっていない」と説明。ドクターレターで注意喚起が行われた7点については、現行の添付文書に既に記載されている内容であり、改めて注意喚起が必要かどうかは検討中だとした。

 また、今回示唆された安全性の人種差については、日系米国人と白人とで安全性に差がないという疫学データはあるものの、他人種との同一性を示す十分なデータはないとしている。

 なお、日本で発売されている「セレベント」はドライパウダーで、「SMART」試験に用いられたものはエアロゾル剤だが、「両者は基本的に同一」(グラクソ・スミスクライン広報部)。日本での承認は日本人対象の第3相試験に基づくもので、現在市販後の安全性調査を実施中だ。また、海外では既に発売されている、キシナホ酸サルメテロールと吸入ステロイドのプロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルタイド)との配合薬(海外での商品名:Seretide、Advair)についても、国内で第3相試験が進められている。

 この件に関するFDAの発表資料はこちら、ドクターレターはこちらまで。GSK社のニュース・リリースは、こちらまで。

■関連トピックス■
◆ 2002.6.20 GSKが国内初の長時間作動型β2刺激薬を発売

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