2003.01.21

DPP試験の介入コストは直接医療費で約2500〜2800ドル、総額で約2万6000〜2万7000ドル

 2型糖尿病の発症ハイリスク者を対象に行われた介入試験「DPP」(Diabetes Prevention Program)で、介入にかかった直接医療費は、メトホルミン群が一人当たり3年で約2500ドル、強力な生活指導群が約2800ドルであることが明らかになった。一方、交通費や運動・買い物に要した時間(労働損失で換算)などの直接非医療費は、強力な生活指導群でメトホルミン群より約1500ドル高く、介入以外の直接医療費減少分を差し引いても、強力な生活指導群の方が総額では1000ドル以上高いとの結果になった。研究結果は、Diabetes Care誌1月号に掲載された。

 DPP試験(Diabetes Prevention Program)は、2型糖尿病の発症ハイリスク者約3200人を対象に、米国で行われた介入試験(関連トピックス参照)。この試験では、2型糖尿病の3年発症率が「強力な生活指導」で6割、「標準的な生活指導+ビグアナイド系薬のメトホルミン(わが国での商品名:メルビン、グリコランなど)服用」で3割、それぞれプラセボ群(標準的な生活指導+プラセボ群)よりも低下することがわかった。

 今回発表されたのは、DPP試験で用いた介入にかかった総コストの詳細な分析。1.介入関連の直接医療費:診察料、カウンセリング料、薬剤・検査費(メトホルミン群のみ)、運動負荷試験・運動指導料(強力な生活指導群のみ)など、2.介入と無関係な直接医療費:入院費、外来診察費など、3.直接非医療費:通院交通費、運動・買い物に伴う労働損失、健康セッション参加費、運動器具レンタル費、食費など、4.間接費用:死亡・合併症による労働損失など−−の四つについて解析を行った。

 その結果、介入関連の直接医療費は、プラセボ群では3年間で一人当たり79ドルだったのに対し、メトホルミン群で2542ドル、強力な生活指導群では2780ドルに達することが判明。一方、介入と無関係な直接医療費は、入院・通院日数が介入群でわずかに減少したため、プラセボ群(5011ドル)よりもメトホルミン群で272ドル、強力な生活指導群で432ドル安くなった。

 大きな違いが生じたのは直接非医療費。これは、DPP試験で行われた介入を、実際に健康増進手法として現場に導入した場合、患者の自己負担となる部分だ。メトホルミン群ではプラセボ群(1万5692ドル)とほぼ変わらず、3年間で9ドル安くなった程度だったが、強力な生活指導群では1445ドル高くなった。間接費用は、プラセボ群(2604ドル)よりもメトホルミン群が230ドル高く、強力な生活指導群で174ドル安いとの計算になった。なお、全員に実施した経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)のコストは一人当たり139ドルだった。

 以上を総合すると、「医療費」という観点では、プラセボ群より余計にかかるコストはメトホルミン群が2191ドル、強力な生活指導群が2269ドルでほぼ変わらないことがわかった。しかし、患者の自己負担分なども含めた「社会的コスト」という観点では、プラセボ群と比べた場合の余剰コストはメトホルミン群が2412ドル、強力な生活指導群が3540ドルで、強力な生活指導では一人当たり3年間でおよそ1100ドル高く付くことが明らかになった。

 今回行われたコスト分析では、例えば被験者がスポーツ好きかどうかで、余暇をスポーツに費やした時間の単位当たり費用の算定基準を変えるなど、ユニークな分析手法が取り入れられている。反面、費用算定は「仮定に仮定を重ねる」形で、さらに運動・栄養指導を行う施設や人員が“既にある”(既存のシステムが利用できる)という条件下で行われており、多くの健康増進現場には当てはまらない可能性が高い。とはいえ、今回提示された費用算出法は、それぞれの現場で見積もりを出す場合の重要な「参考資料」になりそうだ。

 この論文のタイトルは、「Costs Associated With the Primary Prevention of Type 2 Diabetes Mellitus in the Diabetes Prevention Program」。アブストラクトは、こちらまで。

■関連トピックス■
◆ 2002.2.13 生活指導やビグアナイド系薬でハイリスク者の糖尿病発症が抑制−DPP試験より

■参考トピックス■
◆ 2002.9.5 EASD学会速報】2型糖尿病の発症予防の鍵は「減量」、1kgやせればリスクが13%低下−−DPP試験より

訂正】参考トピックスで、「DPP試験の介入に要した費用」がおよそ一人当たり2万5000ドルと報じましたが、これは正確には直接非医療費なども含めた「総額(社会的コスト)」でした。今回の論文で明らかになった社会的コストは、プラセボ群が2万3386ドル、メトホルミン群が2万5798ドル、強力な介入群が2万6926ドルです(スクリーニング費用は除く)。お詫びして訂正いたします。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師の説明を無断録音、裁判の証拠になるのか? クリニック法律相談室 FBシェア数:262
  2. 不足だけでないインフルエンザワクチンへの懸念 記者の眼 FBシェア数:247
  3. 感染研、麻疹発生で医療機関に注意喚起 パンデミックに挑む:トピックス FBシェア数:189
  4. 若年男性の下腹部激痛ではパンツを脱がせろ! カンファで学ぶ臨床推論 FBシェア数:20
  5. 甲状腺機能は低めの方が余命は長い JAMA Intern Med誌から FBシェア数:123
  6. 「一般的な勤務医は労働者」に議論の余地なし 厚生労働省 第2回医師の働き方改革に関する検討会(前編) FBシェア数:255
  7. 電解質の良書 医学書ソムリエ FBシェア数:29
  8. 敗血症は治る病気です 特集◎あなたが救う敗血症《インタビュー》 FBシェア数:6
  9. 98%が「心不全患者の緩和ケアは必要」 学会トピック◎第21回日本心不全学会学術集会 FBシェア数:132
  10. 医師の働き方改革、今後の論点は大きく4項目 厚生労働省 第2回医師の働き方改革に関する検討会(後編) FBシェア数:55