2003.01.09

2型糖尿病の男性の子供は低体重、胎児期インスリン仮説の傍証に

 妊娠中に母親が糖尿病にかかった場合、生まれてくる子供の体重が重くなることはよく知られているが、父親が糖尿病の場合は逆に、子供の体重が軽くなることがわかった。父親が糖尿病かどうかと、子供の出生体重との関連を調べた研究は初めて。いわゆる「胎児期インスリン仮説」(fetal insulin hypothesis)を支持するデータで、今後注目が集まりそうだ。研究結果は、British Medical Journal(BMJ)誌1月4日号に掲載された。

 複数の疫学研究から、出生体重が軽い子供は、将来2型糖尿病になる確率が高いことが示唆されている。その理由を説明するものとして提唱されたのが胎児期インスリン仮説だ。

 この仮説の骨子は、遺伝的に2型糖尿病になりやすい、つまりインスリン抵抗が高い胎児は、胎内での成長が抑制されて出生体重が軽くなるという点。これに従えば、父親であれ母親であれ、親が2型糖尿病であれば、生まれてくる子供の体重は軽くなるはずだ。しかし実際には、母親が妊娠中に糖尿病(妊娠糖尿病)になった場合はいわゆる巨大児が生まれることが多く、仮説を直接支持するデータは得られていなかった。

 母親が糖尿病の場合は、胎内環境(母体の高血糖)が子供の体重を増やす方向に働くため、「低体重になる」との遺伝素因がマスクされてしまうのではないか−−。そう考えた英国小児健康研究所のElina Hypponen氏らは、41年前に同一地域で生まれた約1万1000人の男女(誕生コホート研究の参加者)に連絡を取り、2型糖尿病への罹患の有無と、その人たちの子供の出生体重との関連を調べた。なお、調査の対象から1型糖尿病の人は除いた。

 調査時点で少なくとも一人以上子供がおり、出生体重がわかったのは、男性が4364人、女性が3777人。うち、男性は34人が2型糖尿病に罹患しており、女性は24人が出産後に2型糖尿病を発症していた。研究グループは、男性と女性のそれぞれについて、2型糖尿病への罹患が子供の出生体重とどう関連しているかを評価した。

 その結果、男性が2型糖尿病に罹患している場合、両親が非罹患者の子供と比べ、生まれた子供の出生体重が平均186g有意に軽くなることが判明。一方、女性の場合は、子供の出生体重が133g重くなる傾向が認められた(有意差なし)。興味深いことに、母親が2型糖尿病の場合、第1子より第2子、第2子より第3子の方が出生体重が重かった。

 今回得られたデータは、胎内環境とは関わりが無い、父親側の遺伝素因だけを取り出して評価した点で意義が大きい。「糖尿病の母親から生まれた子供の体重は重いのに、将来糖尿病を発症するリスクは出生体重が軽い子供の方が高い」というパラドックスを解く上で、極めて重要な意味を持つものとなりそうだ。

 この論文のタイトルは、「Parental diabetes and birth weight of offspring: intergenerational cohort study」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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