2002.12.27

肺癌治療薬「イレッサ」の適正使用対策まとまる−−間質性肺炎や肺線維症には慎重投与、処方開始後4週間は入院に準ずる管理を

 12月25日に厚生労働省が開催したゲフィチニブ安全性問題検討会(座長:国際医療福祉大学教授の松本和則氏)で、非小細胞肺癌治療薬ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)の適正使用対策がまとまった。急性肺障害、間質性肺炎、肺線維症の患者、およびこれらの疾患の既往がある患者に対しては、慎重投与とされることが決まった。処方も化学療法の経験がある医師に限定される見通しだ。今回の決定は、製造販売元のアストラゼネカから2002年内にも各医療機関に伝えられ、同薬の添付文書にも反映される。

 この検討会は、厚労省医薬局安全対策課が開いたもので、委員は呼吸器や癌領域の医師などの専門家から構成されている。冒頭に、市販後から12月13日までに報告された死亡例124例を含む副作用症例494例(間質性肺炎と急性肺障害に関する報告は、死亡114例を含む358例。その他の副作用報告は死亡10例を含む136例)の内訳などに関するデータが厚労省から示され、議論は進められた。

 今回まとめられたゲフィチニブに関する方策のポイントは次の5点。まず、医療関係者や製薬企業は、致命的な副作用に関する情報提供と情報収集に積極的に取り組むこと。また、処方に際しては、「化学療法の経験がある医師」が処方を行い、副作用発生が多いと考えられる投与開始後4週間は入院に準ずる管理を行うなど、より適切な管理の下での使用の徹底がなされることとなった。さらに、間質性肺炎、肺線維症、またはこれらの疾患の既往歴のある患者に対しては、「禁忌」ではなく「慎重投与」とすることとなった。

 このほか、「服用者向け情報提供資料」の作成などを通して、患者やその家族に対して死亡を含む副作用の発生数を具体的に伝えることや、企業が副作用の原因究明を行い、その検討結果について逐次報告することが決まった。

 一連の議論の焦点の一つである、間質性肺炎などの既往者に対する取扱いは、当初案では処方を禁忌とすることが提案されていた。しかし、委員を務めた千葉大学肺癌研究施設内科教授の栗山喬之氏や、国立がんセンター東病院副院長の吉田茂昭氏らが、「肺線維症から肺癌に移行する患者も多く、禁忌とすれば薬のメリットを受けることができなくなる人がかなり出てしまう」と指摘。また、日本大学教授の堀江孝至氏は、「炎症がおさまっていれば、必ずしもゲフィチニブは危険とは言えない」と強調し、慎重投与とすることで決着した。

 もう一つの「より適切な管理の下での使用の徹底」に関しては、処方を行う医師に対し「化学療法の経験」という“縛り”が設けられたものの、専門医資格など、より具体的な医師の条件は示されなかった。また、処方後4週間は「入院に準ずる管理」を行うことが決定されたが、順天堂大学呼吸器内科教授の福地義之助氏は、「ゲフィチニブは外来処方できることが最大のメリットであり、週に1回程度外来を受診してもらうといった方法でもよいだろう」と話す。「副作用に関する情報収集のためにも、しばらくは化学療法の経験のある医者が、一定期間フォローする仕組みは重要」(群馬大学教授の堀内龍也氏)という見方もあった。

 このように、今後の方向性についてはあいまいな部分が残されている。他の薬剤との併用についても全く議論されていない。今回示された方策の解釈が、医療機関によってばらついてくることも十分予想される。ゲフィチニブの適正使用については、依然として議論が続きそうだ。

 ゲフィチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)をターゲットとする分子標的薬。他に有効な治療方法が確立されていない非小細胞肺癌を対象としている上に、治験段階では重篤な副作用も少なく、販売前は安全性が注目された。患者の強い希望などもあり、エイズ薬を除けば異例のスピードで承認された。それだけに、同薬で発生した急性肺障害、間質性肺炎に対する関心も高く、検討会には多数の関係者が詰めかけた。(星良孝、日経メディカル

■ 「イレッサ」に関する関連トピックス ■
◆ 2002.7.8 厚生労働省、非小細胞肺癌治療薬「イレッサ」などを新医薬品として承認
◆ 2002.7.9 アストラゼネカが非小細胞肺癌治療薬「イレッサ」を薬価収載前から販売、特定療養費制度の初利用
◆ 2002.10.15 緊急安全性情報】新規肺癌治療薬「イレッサ」でドクターレター
◆ 2002.10.21 解説】「イレッサ」にイエローカード、服用者に間質性肺炎が発症
◆ 2002.12.5 非小細胞肺癌治療薬「イレッサ」の副作用患者291人に、うち81人が死亡−−厚生労働省が発表
◆ 2002.12.10 アストラゼネカ、「イレッサ」による副作用を検討する専門家会議を設置

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 向精神薬になったデパス、処方はどうする? トレンド◎ベンゾジアゼピン系薬の安易な処方に警鐘 FBシェア数:1279
  2. 男性医師は何歳で結婚すべきか、ゆるく考えた 独身外科医のこじらせ恋愛論 FBシェア数:178
  3. JTに異例の反論を出した国がんが抱く危機感 Cadetto通信 FBシェア数:121
  4. 開業4年目の私が医院経営の勉強会を作ったわけ 診療所マネジメント実践記 FBシェア数:45
  5. インフルエンザの早い流行で浮かぶ5つの懸念 リポート◎AH3先行、低年齢でAH1pdmも、外来での重症化… FBシェア数:232
  6. 国主導で『抗菌薬適正使用の手引き』作成へ 政府の薬剤耐性対策アクションプランが始動 FBシェア数:19
  7. 真面目ちゃんが燃え尽きるとき 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:0
  8. 味方ゼロ? 誰にも言えない病院経営の修羅場 裴 英洙の「今のままでいいんですか?」 FBシェア数:193
  9. 医師にも多い? 過敏性腸症候群(IBS)型便秘 田中由佳里の「ハラワタの診かた」 FBシェア数:344
  10. 輸液の入門書 医学書ソムリエ FBシェア数:0