2002.12.15

虚血プレコンディショニングでCABG術後の不整脈が減少

 冠動脈バイパス術(CABG)を受ける患者を対象とした無作為化試験で、術前に一定時間心筋を虚血状態に置いた「虚血プレコンディショニング群」の患者では、術後に不整脈を起こす確率がほぼ半減することがわかった。ヒトを対象とした臨床研究で、虚血プレコンディショニングの抗不整脈効果が示されたのは初めて。研究結果は、Circulation誌12月10日号に掲載された。

 虚血プレコンディショニングは、心筋があらかじめ虚血状態にさらされると、次の虚血イベントに対して耐性が獲得される現象。観察研究や動物実験で、こうした現象が起こり得ることが確かめられてきた。

 臨床研究でも、CABGや経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の術前に一時的に心筋への血流を止めると、トロポニンTなどの心筋障害マーカーが低下することがわかっている。しかし、心筋障害による不整脈発生の予防など、より直接的な臨床効果については、これまで明確なデータは得られていなかった。

 フィンランドTampere大学病院心臓外科部門のZhong-Kai Wu氏らは、3枝病変があり、待機的にCABGを受ける虚血性心疾患患者86人を無作為に2群に分割。一方のみに、2分間心筋への血流を止めた後3分間再灌流を行う「虚血プレコンディショニング処理」を術前に2回行い、術後の不整脈の発症状況を調べた。

 その結果、血流再開後24時間以内(早期再灌流期)に心室細動(VF)を起こした患者の割合は、無介入群(43人)の79.1%に対し、虚血プレコンディショニング群(43人)では48.8%と有意に低いことが判明。術後の非持続性の心室頻拍(VT)も、無介入群では97.7%とほとんどの患者が経験したのに対し、虚血プレコンディショニング群では55.8%と有意に少なかった。持続性のVTは、無介入群の3人に生じたが、虚血プレコンディショニング群では一人も生じなかった。

 VTの抑制効果は、術後2時間までと、術後24〜48時間の2回に分けて現れており、術後2〜24時間では無介入群と変わらなかった。研究グループは「このタイミングは、(動物実験などで知られている虚血プレコンディショニングの)“早期プレコンディショニング”と“遅延プレコンディショニング”に相当する」と考察している。

 この論文のタイトルは、「Ischemic Preconditioning Suppresses Ventricular Tachyarrhythmias After Myocardial Revascularization」。アブストラクトは、こちらまで。

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