2002.12.11

脳内のセロトニン産生、冬季にやはり減少

 健常ボランティア101人を対象とした研究で、日照時間が減る冬季には、脳内のセロトニンの代謝回転(ターンオーバー)速度が落ちていることがわかった。セロトニンは、冬になるとうつ状態になる「冬季うつ病」と深い関係があるとされるが、剖検例以外で脳内のセロトニン量を直接評価できた研究は初めて。研究結果は、Lancet誌12月7日号に掲載された。

 セロトニンは神経伝達物質の一つで、気分や意欲などの情動に関与しており、これが減少するとうつ病やうつ状態になるとされる。「冬季うつ病」患者には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がよく効き、かつ明るい光を一定時間浴びる光線療法でも気分が改善することから、「日照時間が短くなると、脳内のセロトニン量が減り、うつ状態を引き起こす」との発症機序が考えられてきた。

 しかし、こうした患者の脳脊髄液などを用いた検討では、セロトニンだけでなく、ドーパミンやノルエピネフリンなど他の神経伝達物質に関しても、正常者と代謝物量が変わらない。つまり、発症機序モデルの根幹を成す「セロトニン量の季節性減少」については、確たる証拠が得られていなかった。

 オーストラリアBaker心臓研究所のG. W. Lambert氏らは、過去の研究で季節変動を見出せなかったのは、脳以外の部位で作られたセロトニンの影響を排除できなかったからではと考察。脳内セロトニン量を最も直接的に反映すると考えられる内頚静脈から採血し、セロトニンやその代謝物量と、採血の季節や日照時間との関連を評価した。

 研究に協力したのは、健康でうつ病などに罹患していない、18〜79歳のボランティア男性101人。採血は、一晩絶食した翌朝に行った。セロトニン量に影響を与え得る、喫煙やカフェイン含有飲料の摂取は、採血12時間前から控えてもらった。

 その結果、脳内でのセロトニン代謝回転速度は、冬季に最も遅くなることが判明。脳内セロトニン代謝回転速度と関連が認められたのは、気候を構成する要素のうち日照時間のみで、気温や気圧など他の要因との相関はなかった。一方、他の部位で産生されるセロトニン量(内頚動脈血中のセロトニン代謝物量で評価)や、セロトニン以外の神経伝達物質には、季節変動は認められなかった。

 以上から研究グループは、冬季うつ病患者を対象とした検討を加える必要はあるものの、「今回の研究結果は、太陽の光線量が脳のセロトニン産生活性に影響し、季節による気分の変動や季節性の疾患に関連していることを示唆している」と結論付けた。

 なお、興味深いことに、脳内セロトニン代謝回転速度は採血を行った当日の日照時間と強い相関があったが、前日の日照時間とは相関がみられなかった。この点について、研究グループは「採血当日の朝の光の強さで、セロトニン代謝回転速度がすばやく調節されるのでは」とみている。

 この論文のタイトルは、「Effect of sunlight and season on serotonin turnover in the brain」。アブストラクトは、こちらまで。

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