2002.12.04

ホルモン補充療法による乳癌リスク、中止後6カ月で未使用者並みに

 エストロゲン・プロゲスチン合剤を用いるホルモン補充療法(HRT)を受けた患者で乳癌などの発症リスクが高まることがわかり、大きな波紋が広がっている米国から、新たな症例対照研究が報告された。HRTの現使用者では乳癌リスクが確かに高まるが、中止後6カ月以上が経過している人では、HRT実施期間にかかわらず乳癌リスクの上昇は認められないというもので、不安を抱えるHRT既使用者にとって「6カ月」という目安は一つの救いになりそうだ。研究結果は、Obstetrics & Gynecology誌12月号に掲載された。

 この研究は、米国国立小児健康・発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development;NICHD)が実施している「Women's Contraceptive and Reproductive Experiences Study」の一環として行われたもの。乳癌と診断された1870人の閉経後女性を「症例群」、電話調査で抽出された、同地域に住み同年齢層で同じ人種の閉経後女性1953人を「対照群」として、両群の間でHRTなどの使用状況を比較した。

 その結果、HRTを現在も継続中で、使用期間が5年以上の人では、未使用者と比べ乳癌になるリスクが1.54倍(95%信頼区間:1.10〜2.17)との見積もりになった。現使用者に関しては、使用期間が長くなるほど乳癌リスクが有意に高くなることもわかった(傾向に関するp=0.01)。

 一方、HRTを止めてから6カ月以上が経過している人では、使用期間に関わらず、乳癌リスクの上昇は認められないことが判明。ホルモン療法としてエストロゲンとプロゲスチンを一定期間ずつ個別に飲む「シークエンシャルHRT」や、エストロゲンのみを服用するエストロゲン補充療法(ERT)を受けている人では、乳癌リスクの上昇は認められなかった。

 今回得られた結果が示唆するのは、今年7月に中止された「WHI」Women's Health Initiative)研究で示されたように(関連トピックス参照)、HRTの現使用者では乳癌リスクが高まるということ。そして、「止めて6カ月たてば、少なくとも乳癌に関しては安心」とみなせることだ。

 もちろん、今回の研究は症例対照研究であり、エビデンスの強さとしてはプラセボ対照無作為化試験のWHIより劣る。WHI試験の参加者に対しては現在も継続的な調査が進められており、“止めてからどれくらいで安心なのか”に関する確実な答えはその結果待ちとなるが、少なくともそれまでの“つなぎ”として、今回得られたデータは患者説明上重要なものとなるだろう。

 この論文のタイトルは、「Hormone Replacement Therapy Regimens and Breast Cancer Risk」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。この件に関する米国国立衛生研究所(NIH)のニュース・リリースは、こちらまで。

■関連トピックス■
◆ 2002.7.11 NHLBIが臨床試験「WHI」を早期中断、ホルモン補充療法に乳癌、心血管疾患の予防効果なし

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