2002.11.18

【AHA2002速報】 スタチンがリンパ性悪性疾患を増加か、日本の症例対照研究が示唆

 リンパ腫や多発性骨髄腫などのリンパ性悪性疾患に罹患した人では、それ以外の人と比べスタチン系薬の服用頻度がおよそ2倍であることが、虎の門病院受診者を対象とした症例対照研究で明らかになった。東京大学大学院循環器内科(旧所属:虎の門病院循環器内科)の岩田洋氏らが、11月17日のポスターセッションで報告したもの。スタチン系薬による悪性疾患の増加が示唆されたのは初めてで、「より大規模な研究で結果を再確認する必要はあるが、こうした疑いがある以上、安易な適応拡大は慎むべき」と岩田氏は話している。

 岩田氏らは、1995年4月から2001年3月までの6年間に虎の門病院を受診、リンパ性悪性疾患と診断された40歳以上の連続221人を「症例群」に設定。整形外科と耳鼻科を受診した患者から、受診時期と年齢、性別をマッチさせた「対照群」を無作為に抽出し、症例群と対照群との間でスタチン系薬の服用率を比較した。対照群の人数は、整形外科受診者が444人、耳鼻科受診者が437人。症例群、対照群のいずれも女性が約4割を占め、年齢の中央値は症例群が64歳、対照群が61歳だった。

 スタチン系薬の服用歴を調べると、症例群では13.3%(29人)に服用歴があり、対照群の7.3%(64人)を大きく上回ることが判明。年齢で補正したオッズ比は2.17(95%信頼区間:1.33〜3.53、p=0.002)になり、リンパ性悪性疾患の罹患者における服用率は、非罹患者のおよそ2倍、有意に多いことが明らかになった。服用したスタチン系薬の種類は、一人を除きプラバスタチンまたはシンバスタチンで、症例群でプラバスタチンの比率がやや高いが、服用期間は約4年とほぼ変わらなかった。総コレステロール値も、症例群でやや低い傾向はあったが有意差はなかった。

 リンパ性悪性疾患の種類別では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(30%)、形質細胞性(多発性)骨髄腫(28%)、濾胞性リンパ腫(14%)が「上位3疾患」だが、いずれにおいてもスタチン系薬の服用率が罹患者で有意に高かった。特に多発性骨髄腫では、スタチン系薬服用のオッズ比が4.36(95%信頼区間:1.86〜10.2、p=0.001)と、他2疾患の2倍近くになった。

 スタチン系薬には脂質低下作用のほか抗炎症作用、裏返せば免疫抑制作用があり、それがリンパ性悪性疾患の増加に結び付いているのではないかと岩田氏らは推測する。一方、欧米で行われた大規模臨床試験のメタ分析や、乳癌など特定の癌に対する症例対照研究ではスタチンの発癌性が否定されており、今回の結果とは相反する。

 リンパ性悪性疾患の有病率に人種差はなく、「今回の結果は日本人特有というわけではないだろう」と岩田氏。欧米では日本よりスタチン系薬の服用率が大幅に高いため、かえって相関がマスクされている可能性もあるという。「冠動脈疾患患者など、スタチン系薬を必要とする患者がいることは確かだが、安易な増量や、骨折やアルツハイマー病などの予防効果を期待した安易な適応拡大には警戒を要する」と岩田氏は述べた。

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