2002.11.07

「1cm以下の乳癌でも術後放射線照射が必要」、NSABPのB-21試験で結論

 直径が1cm以下の小さな乳癌でも、術後に放射線照射を行った方が、同側乳房内の再発を大幅に抑制できることが明らかになった。米国の癌臨床研究グループ、NSABP(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)が行った大規模臨床試験「B-21」の結果で、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌10月15日号で発表された。

 乳癌の術後に放射線照射を行うと、再発率などを有意に下げることができる。こうした「術後放射線照射」の有用性に関してはほぼコンセンサスがあるが、全例に照射が必要かどうかは今でも議論の的だ。特に、直径1cm以下の小型乳癌に対しては、必ずしも照射は必要でないとの意見が有力だった。

 「B-21」試験では、最大径で1cm以下の腫瘍があり、外科的に腫瘍を摘出した乳癌患者1009人を、1.放射線照射群、2.タモキシフェン群、3.タモキシフェン・放射線照射併用群−−の3群に割り付けて8年間追跡。術後放射線照射の有無で、患者の同側乳房内再発(IBTR)、対側乳房内再発(CBC)、生存率などがどう変わるかを評価した。

 対象患者は全員、乳腺腫瘤摘出手術(いわゆる「くり抜き法」)を受け、その際にリンパ節転移がなく、かつ病理組織学的にも切除断端が陰性であることが確認された。放射線照射は術後14日以内に開始し、総線量を50Gyとした。タモキシフェンは術後35日以内に投与を開始し、1回10mgを1日2回、5年間服用した。

 その結果、IBTRの累積発生率は、タモキシフェン群が16.5%と最も高く、放射線照射群(9.3%)やタモキシフェン・放射線照射併用群(2.8%)を大きく上回ることが判明。IBTRのハザード比は、タモキシフェン群と比べ、放射線照射群で相対的に49%、タモキシフェン・放射線照射併用群では相対的に81%減少したことがわかった。

 一方、CBCの累積発生率については、タモキシフェン群とタモキシフェン・放射線照射併用群ではいずれも2.2%であるのに対し、放射線照射群では5.4%と高かった。なお、生存率はどの群も93〜94%であり、有意な差はなかった。

 副作用に関しては、タモキシフェンを服用した患者にホットフラッシュ(のぼせ)が多く見られたほか、1.4%(9人)の患者に深部静脈血栓(DVT)、0.8%(5人)の患者に肺栓塞症(PE)、0.8%(5人)の患者に脳卒中が確認された。照射線照射を受けた患者には、0.3%(1人)にPE、0.6%(2人)に脳卒中が認められた。

 研究グループは、「1cm以下の乳癌においても、術後にかなり高い確率でIBTRが生じる。今回の臨床試験では、術後放射線照射がIBTR予防に非常に有用であることを確認できた」と結論。「術後放射線照射は、エストロゲン受容体が陽性か陰性かにかかわらず必要であり、エストロゲン陽性の患者の場合では、術後放射線照射とタモキシフェンの併用を薦めるべきである」と提唱している。

 この論文のタイトルは、「Tamoxifen, Radiation Therapy, or Both for Prevention of Ipsilateral Breast Tumor Recurrence After Lumpectomy in Women With Invasive Breast Cancers of One Centimeter or Less」。アブストラクトは、こちらまで。(張辛茹、医療ジャーナリスト)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 62歳女性。下肢に多発する、浸潤を触れる紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  2. 今冬はインフルエンザワクチンには頼れません! 特集◎いつもと違う! 今冬のインフルエンザ《1》 FBシェア数:298
  3. 誤嚥性肺炎って何科の疾患? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:434
  4. インフル迅速検査、全例には必要ありません! 特集◎いつもと違う!今冬のインフルエンザ《2》 FBシェア数:779
  5. 「たかが過換気」と侮ってはいけない 酸・塩基・電解質マネジメント FBシェア数:94
  6. 62歳男性。口唇のしびれと呼吸困難 日経メディクイズ●神経内科 FBシェア数:0
  7. 来シーズンには新機序の抗インフル薬登場 寄稿◎2017ー18シーズンのインフルエンザ診療の要点《下》 FBシェア数:2
  8. 66歳女性。意識障害、痙攣 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  9. 「給料泥棒なの?」 上司の言葉に夜も眠れず 院長を悩ます職員トラブル大研究 FBシェア数:90
  10. 2018年度ダブル改定の“真の主役”は「看取り」 日経ヘルスケアon the web FBシェア数:22