2002.11.07

倫理委員会の施設内設置はわずか半数、厚労省研究班調査で判明

 人間を対象とした臨床研究に欠かせない「倫理審査委員会」を、施設内に設置している研究機関は、約半数に過ぎないことがわかった。倫理審査委員会の運営面に関しても、「事務手続きが煩雑」、「外部委員の選択や依頼が困難」など、様々な問題点があることが浮き彫りになった。厚生労働省研究班の調査から判明したもので、班長を務める国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部室長の白井泰子氏らが、日本生命倫理学会第14回年次大会で調査の一部を報告した。

 この調査を行ったのは、厚労省の「遺伝子解析研究・再生医療等、先端医療分野における研究の審査および監視機関の機能と役割に関する研究班」。今年3月、全国の大学医学部や医科大学、医科系研究機関248施設と病院2000施設を対象にアンケート用紙を配布し、倫理審査委員会の施設内設置の有無や、委員会の開催・運営に当たっての問題点などを尋ねた。有効回答数は527施設で、うち103施設は大学などの研究機関。

 その結果、「何らかの形で倫理審査委員会を設置している」施設は、回答のあった施設の5割弱で、特に200床未満の病院では設置率は5%未満だったことがわかった。回答病院の半数は、設置予定もないと答えた。

 また、「委員会の開催や運営にあたっての問題点」については、どの施設も「事務手続きが多い」、「事務担当者がいない(あるいは少ない)」、「運営資金が不足」などの問題点を挙げ、倫理委員会の運営にはモノもカネも不足している現状が明らかになった。

 わが国では人間を対象とした研究(ヒトおよびヒト由来試料による研究)に関し、2000年4月に「ヒトゲノム研究に関する基本原則」、2001年3月に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する指針」(三省指針)、そして今年6月には「疫学研究の倫理指針」が策定された。これらの指針では、研究の適正を確保するために施設内に倫理審査委員会を設置するよう規定されており、申請された研究を、研究の妥当性や有用性、試料提供者の人権の尊重やプライバシー保護を考慮して審査することになっている。

 今回の調査結果が示唆するのは、指針を遵守する上での大前提である「倫理審査委員会の設置」すら、十分に行われていないということ。また、三省指針にもあるように、公正で中立な審査のため、倫理審査委員会は外部の有識者や一般人も含めて構成される。しかし実際には、「外部委員の選択や依頼の難しさ」を問題点として挙げる施設も少なくなかった。さらに「審査に必要な知識の不足」といった審査側の問題、「記載の不十分な申請書を提出する」といった申請者側の理解不足も挙げられた。

 日本での倫理審査委員会の設置は、1982年に徳島大学医学部で体外受精を行ったことがきっかけと言われ、臓器移植や遺伝子解析の進展に伴って設置数は増加している。だが、今回の調査が示す通り、運営面には課題が山積みで、わが国の倫理審査委員会はまだ過渡期にあるといえるだろう。なお、この調査結果は、今月末に冊子としてまとめられる予定だ。(八倉巻尚子、医療ライター)

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