2002.10.25

【リクエスト】たばこ税の増税で、将来の医療費を削減する効果も期待できる(コラム:医師も戸惑う健康情報)

 先日、私のクリニックの近くにある公園で二人の女子高生がたばこを吸っていた。注意されて女子高生はすぐたばこを消したが、恐らく彼女たちは場所を変えてまた吸うのだろう。

 その後の日曜日の早朝に近所の人たちが集まってその公園の清掃を行った。ところが、その翌朝にはブランコの近くにたばこの空箱が捨てられていた。そういえば日曜日の夕方に若い女性たちがそのブランコにすわって話をしていた。もしかすると彼女らがたばこを吸っていたのかも知れない。

 たばこは嗜好品なのだから吸いたい人が吸えばいい、という人がいる。しかし、一度吸い始めるとやめたくてもやめられないのがたばこである。狂牛病騒ぎの時に人々はあっという間に牛肉を控えたのに対して、たばこと肺癌との関連が指摘されてもいっこうに喫煙率が低下しないのはその例だろう。実際喫煙者の6割は禁煙を希望していながらタバコを吸い続けている(1)。禁煙の困難さを考えると、たばこを吸い始める前にそのベネフィットとリスクについて十分考えてもらうことが必要だ。

 特に青少年がそのようなことは考えず、「何となく」「友人のすすめ」「好奇心」などを理由に簡単にたばこに手を出してしまうことが問題だ(2)。その背景には日本ではたばこを入手しやすいという事情がある。青少年にたばこを吸い始めさせないためには、まずたばこ入手のハードルを高くすることだ。ノルウェーで青少年の喫煙率が低下したのは、防煙教育ばかりではなく、たばこ広告の全面規制、たばこ自動販売機の撤去、たばこを販売時の身分証明書提示、たばこ価格の大幅な値上げなどが功を奏したからだ(1)。

 最近、新聞に掲載された日本たばこ協会の意見広告を目にした(3)。たばこの税率は6割と税負担の重い商品であるから、さらなる増税に反対しようというものである。彼らは、たばこ税はすでに年間2兆円以上財政に貢献している、たばこ税増税は家計を圧迫すると主張している。

 しかし、厚生労働省によればたばこによる健康障害のための超過医療費は年間約1兆円に及ぶ。あるいは、喫煙に起因する疾病に関わる国民医療費は年間3兆2000億円という人もいる(4)。しかも、たばこが原因で病気になることで医療費がかかったり、仕事ができなくなったりすれば、家計への影響はたばこ税どころではない。ちなみに、海外のたばこの価格はカナダで700円、イギリスで700〜800円、米国で4ドルくらいだという。先進国中日本のたばこの価格は安い方だ。(他の物価は高いのに。)

 たばこ税増税の目的は財政を増やすことだけではない。たばこの価格を上げることは青少年の喫煙抑制などを介して、将来の医療費を削減する効果も期待できる。その意味で、日本たばこ協会の意見広告は、国民が神経質になっている「増税」という言葉を強調する一方、増税から派生する様々な効果を無視しており、きわめてかたよったプロバガンダであるといわざるを得ない。

 最近、日本たばこ協会の意見広告に対抗して、日本禁煙推進医師歯科医師連盟(5)を初めとした禁煙団体が増税賛成署名を開始した(6)。興味ある方はこのサイトをご覧いただきたい。

■参考文献■
1) 日本医師会雑誌、127巻、1031-1034、2002
2) 日本医師会雑誌、127巻、1015-1018、2002
3) たばこ税ドットコム http://tobacco-zei.com/
4) 日本医師会雑誌、127巻、1064-1065、2002
5) 日本禁煙推進医師歯科医師連盟 http://www.nosmoke-med.org/
6) 増税賛成署名 http://www.nosmoke-med.org/signature/

*著者のホームページでも「健康情報の読み方」を提供しています。ご覧ください。
「健康情報の読み方」ホームページ
http://www.page.sannet.ne.jp/onai/

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