2002.10.25

【日本公衆衛生学会速報】 長期的な脳卒中予防対策が発症後の自立状態者増に貢献 

 長期的な脳卒中予防対策により、その発症率や死亡率を減少させることは既に示されていたが、発症3年後において自立者を増やすこともわかった−−。これは、滋賀医科大学福祉保健医学講座の岡村智教氏が10月24日、日本公衆衛生学会の奨励賞受賞者講演で説明した研究成果の一つ。同氏は、「老人保健事業を中心とした地域保健対策の評価と推進に関する研究」で、学会の奨励賞を受賞した。

 冒頭の成果は、1969年から30年以上にわたり脳卒中予防対策を実施している高知県のある町における調査結果から明らかになったもの。40歳以上の脳卒中患者の発症後の生死や日常生活動作(ADL)の状況を調べ、20年間の推移と発症前の血圧値との相関を検討。ADLについては、訪問記録を閲覧するとともに、生存者はすべて本人もしくは同居家族に面接を実施した。

 その結果、脳卒中発症から3年後の状態については、前期10年間と後期10年間を比べると、要介護状態の人の割合はやや減少しているがほとんど変わっていなかった。しかし、死亡している人の割合は10ポイント以上少なくなっており、自立している人の割合が約10ポイント増加していた。こうして、脳卒中予防対策により、発症後における自立者の割合を増やすことが示されたという。

 また、発症前の収縮期血圧値と発症3年後における状態を、「141mmHg以下」、「142〜160mmHg」、「161mmHg以上」の3群で比較してみると、「141mmHg以下」群を1とすると、死亡のオッズ比が「161mmHg以上」は2.5を超えており、発症前の血圧値が高いと予後が良くなかったと述べた。

 岡村氏は、この研究成果が、高知県老人保健福祉計画の基礎資料として活用されたことも紹介した。介護サービス供給目標量を算定する際、要介護老人の出現率を予防対策により5%程度抑えられるという前提条件が盛り込まれたのだ。一般的には、将来の推計人口に現状の要介護者の出現率をそのままかけているという。

 次に、家族構成と入院受療率に関する研究成果も披露した。上記と同じ町において過去20年間に脳卒中を発症し、発症から1週間の時点で入院していた247人を追跡し、発症1年後の入退院状況を調査したところ、1年後に入院しているか否かは家族構成に強く依存していることがわかったと説明。加えて、高知県は世帯当たりの同居者数が少ないことも紹介。岡村氏は、「入院患者が多い要因として、病床数が挙げられることが多いが、家庭における介護力がもともと弱いことが寄与している」と語った。

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