2002.10.22

早期乳癌の生命予後は20年後も「乳房全摘術」と「乳房温存療法」で差なし、歴史的な臨床成績が発表

 約30年前にスタートした早期乳癌の術式比較試験の長期成績2報が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌10月17日号に掲載された。中央値で20年追跡しても、乳房の全摘手術を受けた人と温存手術を受けた人とで、総死亡率や無再発生存率などに全く差が認められないことが判明。「早期乳癌に対して乳房を全摘する正当な理由がない」ことが、今や誰の目にも明らかになった。

 今回掲載された長期成績の一つは、イタリアで1973年からスタートした比較試験。乳房と胸筋、リンパ節を全て切除する「ハルステッド手術」と、温存療法の一種で乳房の4分の1を切除し、リンパ節も取る「4分の1切除術」とを比べるものだ。対象は腫瘍直径が2cm以下の早期乳癌患者701人で、4分の1切除法に割り付けられた人は術後に放射線照射を受けた。また、リンパ節転移が陽性だった人は、両群ともに1976年から術後化学療法を受けた。

 最長29年間、中央値で20年間追跡したところ、手術を受けた方の(同側の)乳房における乳癌再発率は、乳房を取り去ったハルステッド手術群(349人)の方が有意に低くなった。20年間の同側再発率は、ハルステッド手術群が2.3%、4分の1切除術群(352人)が8.8%となった。

 しかし、対側乳房での発癌率や遠隔転移率などには、両群で差がないことが判明。総死亡率も両群間で差がないまま推移し、20年間の総死亡率はハルステッド手術群が41.2%、4分の1切除術群が41.7%だった。

 もう一つの長期成績は、1976年にアメリカでスタートした「B-06」試験。臨床病期が1〜2で、腫瘍直径が4cm未満の早期乳癌患者1851人を対象とした。比較した術式は、1.乳房を全摘、リンパ節を切除するが胸筋は残す「胸筋保存乳切」、2.腫瘍のみをくり抜きリンパ節は残す「くり抜き法」、3.くりぬき法実施後に放射線照射−−の三つ。長期成績は最低20年間追跡できた人、あるいはそれ以前に亡くなった人(全体の69%)でのみ評価したが、解析患者の比率に群間の差はなかった。

 その結果、同側乳房での乳癌再発率は、くりぬき法後に放射線照射を受けた群(628人)が14.3%、受けなかった群(634人)が39.2%で、放射線照射が同側での局所再発を有意に防ぐことが判明。しかし、無病生存率、無転移生存率と総死亡率のいずれも、この3群間で差が認められなかった。放射線照射はやや生命予後などを改善する傾向がみられたが、有意な差とはならなかった。

 今回発表された長期成績が示すのは、ハルステッド手術であれ胸筋保存乳切であれ、乳房を全摘する手術が「長い目で見れば生命予後が良い」との仮説が成り立たないということだ。

 これらの試験では、約10年追跡した時点で「差がない」ことが報告されていたが、当時は「さらに長期にみなければわからない」との反論も出されていた。今回の20年成績の発表で、この問題にようやく最終決着が付いたと言えそうだ。

 イタリアで行われた研究論文のタイトルは、「Twenty-Year Follow-up of a Randomized Study Comparing Breast-Conserving Surgery with Radical Mastectomy for Early Breast Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。米国の「B-06」試験に関する論文のタイトルは、「Twenty-Year Follow-up of a Randomized Trial Comparing Total Mastectomy, Lumpectomy, and Lumpectomy plus Irradiation for the Treatment of Invasive Breast Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。

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