2002.10.20

【日本癌治療学会速報】 複合カロテンが肝硬変からの発癌を抑制、発癌率が無介入群のほぼ3分の1に

 β(ベータ)カロテンなどの複合カロテン製剤を服用した人では、非服用者と比べ、肝臓癌の新規発症率が4年でほぼ3分の1になることがわかった。B型またはC型肝炎ウイルスに罹患し、肝硬変にまで肝障害が進んだ約200人を対象とした無作為化試験の結果で、10月18日のワークショップ「がん予防の臨床」で報告された。

 この臨床試験を行ったのは、神野内科・消化器科クリニックの神野健二氏(旧所属:四国がんセンター)、京都府立医科大学生化学の西野輔翼氏、兵庫医科大学消化器内科の石川秀樹氏(旧所属:大阪府立成人病センター)らの研究グループ。神野氏らは、肝硬変にまで進展した肝炎ウイルス感染者では、βカロテンやリコペン(トマトの赤み成分)、α(アルファ)トコフェロール(ビタミンE同族体の一つ)などカロテン類の血中濃度が大幅に低下することに着目。こうした複合カロテンと、発癌抑制作用が示唆されている緑茶抽出物(G.T.E)(関連トピックス参照)とを用いた無作為化試験を行い、肝硬変から肝臓癌への進展がどの程度抑制されるかを調べた。

 試験の対象は、B、C型肝炎ウイルスに罹患しており、血中αトコフェノール濃度が400ng/ml以下で、40歳以上の肝硬変患者186人。既に肝臓癌を発症した人や、インターフェロン治療歴がある人は対象から除いた。

 対象者の割付は、1.複合カロテン服用群、2.GTE服用群、3.複合カロテン+G.T.E服用群、4.無介入群−−の4群。平均年齢や男女比、C型肝炎ウイルス罹患者比率や観察期間に群間の差はない。複合カロテンの1日量は、αカロテン3mg、βカロテン6mg、リコペン10mgとαトコフェロール50mgで、「日本人の1日所要量の2〜3倍に相当する。トマトなら3〜4個分」(神野氏)。G.T.Eの1日量は緑茶10杯分に相当する600mgとした。

 追跡期間は5年を予定していたが、4年目の中間解析で有意な差が出た上、肝硬変患者へのインターフェロン投与が承認されるなど情勢にも変化が出たため早期に試験を中断した。追跡期間の中央値は3.4年。また、試験開始から6カ月以内に肝臓癌を発症した3人は解析対象から除外した。試験からの脱落はなく、最終的な解析対象者は183人。

 その結果、複合カロテン服用群(46人)では、2年目までの累積発癌率は無介入群(45人)と変わらないものの、3年目から差が拡大。4年累積発癌率では、それぞれ12.3%、34.6%となり、複合カロテン服用群で有意に新規発癌が抑制されることがわかった(p=0.02)。

 一方、G.T.E服用群(45人)では、当初から無介入群より累積発癌率が低いままで推移するものの、4年累積発癌率は19.1%。無介入群(34.6%)より低い傾向はあるが有意な差とはならなかった(p=0.06)。また、複合カロテンとG.T.Eを併用した群(47人)では、4年累積発癌率は18.3%となり、無介入群より有意に低いものの複合カロテンのみを服用した群より高く、カロテンとGTEとの“相乗・相加効果”は認められなかった。

 なお、この試験ではプラセボを用いておらず、介入に用いた経口薬も複合カロテンが赤色、G.T.Eが緑色。「医師だけでなく患者さんも、自分がどの群に割り付けられたかがわかっていたと思う。少なくとも無介入群に割り付けられた人は、お茶やトマト、ニンジンなどを積極的に摂取した」と神野氏は話す。

 それでもこれだけの差が出たのは、「お茶を10杯飲もう、トマトを3個食べようと思っても、毎日は続けられなかった人が多かったためではないか」と神野氏は推測する。盲検試験ではなかった点は確かにこの研究の弱点だが、逆に、食事としてではなく薬や栄養補助食品として栄養素を取る利点が明確になったとも言えよう。

 神野氏らは今後、各種カロテンや緑茶成分のエピガロカテキンの血中濃度別に発癌率を調べ、癌を発症した人としなかった人とにどのような差があったかを検証する。また、肝障害が肝硬変段階にまで進むと、セレニウムなどの微量元素量も減ることがわかっており、「今後はセレニウムなどを用いた介入試験を行いたい」と神野氏は話した。

■関連トピックス■
◆ 2002.10.2 日本癌学会速報】「緑茶1日10杯」で癌再発予防、“埼玉方式”で介入試験がスタート

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