2002.10.18

【日本高血圧学会速報】 食塩感受性高血圧の克服を目指して−−会長講演より

 東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科の藤田敏郎氏は10月12日、「生命科学から生活習慣病の克服へ」のテーマで、日本高血圧学会で会長講演を行った。食塩感受性高血圧における腎障害、インスリン抵抗性、遺伝子診断などの話題を取り上げ、同氏自身の研究の歴史と教室の研究成果を中心に語った。

 まず腎障害に関しては、食塩感受性の人は食塩を付加すると糸球体内圧も上昇することがわかり、これが高血圧になる大きな原因の一つと考えられると述べた。糸球体内圧の上昇が糸球体硬化につながり、その仲介しているのが、よく知られているTGF-βと説明した。

 そのうえで、藤田氏は、TGF-β(Transforming Growth Factor-β)以外に同様の働きをする因子として、レクチン様酸化LDL受容体LOX-1を挙げた。これは、血管内皮細胞における主要な酸化LDL受容体であり、酸化LDLの内皮細胞傷害作用を担っていると考えられているもの。同氏は、ラットを用いた数々の実験結果を紹介し、LOX-1の腎機能低下への関与を解説した。

 また、アドレノメデュリン(AM)はアンジオテンシン2(A2)と拮抗し血管保護作用を有し、酸化ストレスを抑制することを紹介。AM欠損マウスを作成し、尿中イソプロスタンなどにより、欠損マウスではA2と食塩により、酸化ストレスが進むことを確認したという。加えて、AM欠損マウスにおける新生内膜の増生をAM遺伝子の注入で抑制できることも示し、AMの抑制効果がより明らかとなったと報告した。

 最近話題になっているインスリン抵抗性については、酸化ストレスも関与していることを、これまでの自身の教室の研究で認めたという。さらに、早くからカリウムに注目していた藤田氏は、ラットでカリウムの抗酸化作用を確認した。こうした結果を踏まえ、カリウムは、食塩とは反対に、血圧や酸化ストレスの抑制作用を持ち、結果的にインスリン抵抗性を改善し、動脈硬化も抑制するとした。

 同氏は、カリウムの効果は臨床試験でも示されていると説明。2000年に発表されたSHEP(Systolic Hypertension in the Elderly Program)研究のサブ解析で、利尿薬の脳血管障害予防効果が低カリウム血症群では認められなかった事実を取り上げた。

 次に、食塩感受性高血圧の遺伝子診断の可能性にも触れ、ヒトでは、世界的にもいくつかの遺伝子多型が候補に挙がっている程度と述べ、同氏も、「取り組んでいくべき課題だと考えている」と、自らの研究課題の一つとの認識を示した。

 最後に、高血圧の予防と治療に言及し、治療に関しては、新しい作用機序を持つ降圧薬、また、LOX-1阻害薬といったような降圧効果だけでなく、臓器保護作用を持った新しい薬もまだまだ出てくる可能性が十分にあると予想。さらに、「遺伝子診断が可能になれば、より的確で効果的な(減塩)指導や(個別)治療が行えるようになる」と語り、会長講演を締めくくった。

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