2002.10.18

【日本高血圧学会速報】 ディベート2「高血圧臨床における問題点」 高齢者高血圧のファーストチョイスはCa拮抗薬かRA系阻害薬か

 学会ではお馴染みとなったディベート。対立軸を鮮明にしたテーマについてそれぞれの立場から主張し合い、問題点を浮き彫りにする試みだ。学会二日目に行われたセッション、ディベート2「高血圧臨床における問題点」では、「高齢者高血圧のファーストチョイス」「糖尿病を伴う高血圧の第一選択薬」「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬との併用療法」について、それぞれ専門家が登壇。これまで得られたエビデンスを駆使して、討論を繰り広げた。

 中でも対立軸が分かりやすかったのは、高齢者高血圧のファーストチョイス」。琉球大学の瀧下修一氏(写真左)は、「カルシウム(Ca)拮抗薬を基礎とした治療が有用である」と主張。これに対し、愛媛大学の檜垣實男氏(写真右)は、「レニンーアンジオテンシン系阻害薬は、高齢者高血圧のファーストラインドラッグとしてまず選択すべき薬剤」と結論付けた。

 瀧下氏は沖縄県のデータを提示し、高齢者では脳卒中の発症率が心筋梗塞や腎死よりも高いことから、まず高齢者高血圧では脳卒中の発症抑制効果を重視すべきとの立場から自説を展開した。その上で、最近のメタアナリシスでは「非致死性の脳卒中発症はCa拮抗薬群が従来薬群より25%低いことが報告されている」とし、Ca拮抗薬の有用性を強調した。

 加えて、ステージ1収縮期高血圧においてCa拮抗薬により「十分な降圧を示すものが多い」と言及、左室肥大の抑制やQOL改善もみられると続けた。最後に、高齢者高血圧のCa拮抗薬による降圧の意義を、ステージ2以上では「脳卒中の発症抑制、糖尿病合併症例での心血管事故発症抑制」にあるとし、ステージ1では「合併症のない軽症高血圧の進展抑制、心血管事故発症抑制の可能性」とした。Ca拮抗薬がRA系阻害薬より安価である点にも着目、「医療経済的にも有用である」と締めくくった。

 一方の檜垣氏は、高齢者高血圧の特徴を整理するところから討論を開始。動脈硬化の進展、収縮期高血圧、臓器合併症の進展、血圧が不安定、多疾患の合併、副作用が出やすい−−などの特徴を挙げた。これらの特徴に対応していることがファーストチョイスの条件であるとし、理想的降圧薬には、1.穏やかな降圧作用、2.副作用(特に代謝性副作用)がない、3.臓器保護作用がある、4.QOLとADLの維持または改善作用がある−−などの点が求められるとした。

 これらの条件に沿って議論を進めた檜垣氏は、「穏やかな降圧作用」については「最近の降圧薬は概ね該当する」とした。「副作用(特に代謝性副作用)がない」点については、「Ca拮抗薬とRA系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシン2受容体拮抗薬)が有利」と指摘。「臓器保護作用がある」については、「RA系阻害薬の報告が絶対的に多い」と強調した。最後の、「QOLとADLの維持または改善作用がある」については、「Ca拮抗薬とRA系阻害薬で良好とする報告が多い」と分析した。

 これらを踏まえながら、最近の大規模臨床試験の結果も紹介。今年3月の米国心臓学会(ACC)で報告されたLIFE試験や、6月の国際高血圧学会(ISH)で報告されたアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬の高血圧に対する有用性を検討する試験SCOPEにも触れた。特にSCOPEでは、A2受容体拮抗薬カンデサルタンによる高齢者中等度高血圧例の非致死的脳卒中減少効果が確認された点を強調。RA系阻害薬単独で降圧効果が不充分であっても、少量の利尿薬やCa拮抗薬との併用で降圧効果が増強できるとし、「高齢者高血圧のファーストラインドラッグとしてまずRA系阻害薬を選択すべき」とまとめた。

 講演後、「Ca拮抗薬は医療経済的にも有用である」との主張に対するコメントを求められた檜垣氏は、ただ安いからというだけでなく、費用対効果の精緻な検討が必要であるとの認識を示した。

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