2002.10.17

意識障害患者の原因疾患、「脳」かそれ以外かを収縮期血圧で鑑別

 意識障害を起こした状態で搬送されてきた患者のうち、収縮期血圧が高い人では、意識障害の原因が脳にある確率が高いことがわかった。脳血管障害だけでなく、脳腫瘍やてんかんなどによる意識障害でも、収縮期血圧が高かったという。意識障害の患者529人を対象とした観察研究によるもので、救急現場におけるより迅速で的確な診断に、血圧というありふれたバイタルサインが有用であることを示す成果だ。研究結果は、国立犀潟病院(新潟県)の池田正行氏らが、British Medical Journal(BMJ)誌10月12日号に発表した。

 救急医療では、意識障害の患者に対し、頭部CTや神経学的検査をルーチンに行うことが多い。だが、その半数は脳以外が原因の意識障害であることが知られている。こうした検査が「場合によっては時間と資源の無駄になるだけでなく、正しい診断が遅れることにもつながる」と考えた池田氏らは、バイタルサインに着目。2000年に旭中央病院(千葉県)に搬送された意識障害の患者を対象に、意識障害の原因疾患とバイタルサインとの関係を調べた。

 意識障害の診断には、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)を用いた。これは、開眼の状態を1〜4点、発語を1〜5点、運動機能を1〜6点で点数化して、正常が15点、最も重症が3点になる評価法。研究グループはGCSが満点の15点に満たなかった場合を「意識障害あり」と診断した。

 この期間に同病院に搬送された人のうち、頭部外傷以外で、意識障害のあった15歳以上の患者は529人。このうち「脳に起因する意識障害」患者は312人(59%)、女性が約半数を占め、平均年齢は66歳、GSCの平均は9.9点だった。「脳以外に起因する意識障害」患者の背景もほぼ同じだった。

 意識障害の原因を障害部位別にみると、「脳に起因する意識障害」の場合、約8割が脳卒中、約1割がてんかんで、続いて脳腫瘍、髄膜炎・脳症によるものだった。一方の「脳以外に起因する意識障害」では、低酸素症・虚血が約4割、薬物中毒が約3割を占め、ほかに肝性昏睡や糖尿病性昏睡もみられた。

 研究グループは次に、意識障害の原因部位別にバイタルサインを比較した。すると、「脳に起因する意識障害」の患者の収縮期血圧は平均で168mmHg、「脳以外に起因する意識障害」では111mmHgとなり、前者で有意に高いことがわかった。拡張期血圧も前者で高く、脈拍は前者で有意に低かったが、体温には違いがなかった。

 そこで研究グループは、バイタルサインにより原因部位をどの程度正確に推定できるかを、感度と偽陽性率によるROC曲線(receiver operating characteristic curve=受信者操作特性曲線)を使って分析した。その結果、拡張期血圧や脈拍に比べ、収縮期血圧が最も「脳に起因する意識障害」の鑑別能が高いことがわかった。尤度(likelihood ratio)は、収縮期血圧が170mmHg以上の場合、事後確率が90%以上となった。

 以上から研究グループは、「脳に起因する意識障害の診断に、収縮期血圧が有用である」と結論付けている。

 この論文のタイトルは「Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承ください)。(八倉巻尚子、医療ライター)

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