2002.10.17

【日本癌治療学会速報】 外科的切除か、内科的アブレーションか?、肝臓癌治療戦略の埋まらない溝

 10年来の大論争となっている「肝臓癌治療のダブル・スタンダード」は、はたして解消される時が来るのか−−。10月16日に行われた指定シンポジウム「がん治療のcontroversy」では、外科の立場から明和病院(兵庫県西宮市)外科の山中若樹氏、内科の立場から東京大学消化器内科の椎名秀一朗氏が登壇。多くの医師にとって既になじみ深い「外科的切除と内科的アブレーションのどちらが優れるか」との議論を繰り広げた。

 山中氏は「治療法(医者)を選ぶのも寿命のうち?」という刺激的なタイトルで講演。多施設共同試験で、内科的アブレーションのうち経皮的エタノール注入療法(PEI)との比較では、「単発、直径2〜5cm」なら外科的切除の方が有意に生命予後が優れるとの長期成績が既に出ていることを強調した。

 また、PEIを代替する形で広まっている、マイクロ波やラジオ波を用いる焼灼療法に関しても、特に大きい腫瘍に試みた場合に局所再発率の高さなどが指摘されていることを提示。「手術可能な単発肝癌なら、直径が3cmを超える場合の第一選択は外科的切除」であり、「2〜3cmでは内科的アブレーションも可能だが、臨床経験が豊富な施設に任せるべき」との考え方を示した。

 一方の椎名氏は、肝臓癌は他の固形癌とは異なり、1.肝硬変による肝機能低下や多発性病変のため切除適応例が少ない、2.肝臓内微小転移や多中心性発癌があるため切除しても高率に再発する−−との特徴があると強調。外科的治療の役割には自ずから限界があるとした。

 その上で椎名氏は、同氏の所属する東京大学消化器内科と、東京大学肝胆膵外科における「初発の肝細胞癌患者」の生命予後を比較したデータを提示。腫瘍の数や肝機能などの患者背景で層別化した解析では、生命予後に差は認められないことを示し、「同等の生存率なら侵襲が少なく、再発への再治療も容易な内科的アブレーションを行うべき」とした。

 両者の考え方が一致したのは、「内科的アブレーションは簡単にみえるため、安直に行われる傾向があり、治療成績には施設間差が激しい」という点。ただし、フロアからは「うんざりするくらい同じ話を聞いている。臨床上で最も問題なのは半数が再発するステージ3の肝臓癌で、外科だ内科だと言っても限界がある」「実際に目にする症例の多くは多発癌。“単発で肝機能が比較的良い”という限られた症例で、どちらが優れるという話を続けるのは不毛であり、われわれも考え方をそろそろ変えたほうが良いのでは」との厳しい意見が出された。

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