2002.10.16

義歯安定剤は短期間の使用に限定、長期使用では歯槽骨の吸収も

 義歯(入れ歯)の保持や安定(落ちない、噛める)を目的に市販されている義歯安定剤の市場規模は、現在1000億円にも達する。この義歯安定剤に対しては、不潔になりやすいことや、噛み合わせの位置が毎回変わることで歯槽骨(歯ぐきの骨)が吸収され、なくなってしまうことなどを理由に歯科医師は使用に否定的であり、「きちんと義歯を調製して対応すべき」との立場だった。

 10月11〜13日に名古屋国際会議場で開催された日本補綴学会学術集会では、「このまま義歯安定剤を放置しておくことは歯科医の責任放棄である」という認識の下、「緊急シンポジウム・こんなに使われている義歯安定剤」で、歯科医師が取るべきスタンスが議論された。

 義歯安定剤は、大きく二つのタイプに分けられる。一つは、天然ゴムや水溶性高分子を主成分とし、粉末状やクリーム、あるいはテープ状をしたいわゆる粘着剤タイプ。これは水分により膨潤することで、粘性により義歯を保持する。もう一つは酢酸ビニル樹脂を主成分とするチューブ入りのホームリナイナー(クッションタイプ)。義歯を乾燥させてから使用し、口腔内とのすき間を埋めることで保持を図る。現在2タイプのシェアは5割ずつ分け合っている。

 シンポジウムではまず、この二つを分けて考える必要があることが強調された。

 まず粘着剤タイプに関しては、高齢化社会が進展した現状では使用を一概に否定できないことが挙げられた。たとえば、歯科医師への受診機会が少なくなってしまう在宅高齢者への一時的な使用である。また、高齢者に多い口腔乾燥症の患者では、義歯の保持には口腔内の水分が必須であるため、義歯安定剤による補助が有用であるとした。

 一方、ホームリナイナーについては、粘着剤タイプよりも薄くなりにくく、毎回義歯を装着する位置が変化してしまうことから、不具合の原因が分かりにくくなるなどの問題点が指摘された。

 シンポジウムでは「これだけ合っていない義歯を患者さんが入れているという事実を謙虚に受け止めなければならない」との発言も出た。日本補綴歯科学会では今回の議論をたたき台に、義歯安定剤の使用に関するガイドラインを作成することも想定している。

 なお米国では、歯科医師の指導の下に500万人が義歯安定剤を使用している。その際に歯科医師が患者に指導している項目は、1.控えめに使用すること、2.義歯から完全に取り除いてから新しいものを使用すること、3.粘膜からも完全に除去すること、4.適合の悪い義歯には使用しないこと、5.使用後に種々の問題が起こる可能性があること、6.変化があれば使用を中止すること、7.義歯の適合点検のために定期点検を行うこと──などである。

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