2002.10.13

【日本高血圧学会速報】 少量の利尿薬でも本当に糖尿病発症が促進されるか?、安全性検証試験が近くスタート

 琉球大学、国立循環器病センター、京都大学など5医療機関が共同で、利尿薬の代謝面での安全性を検証する臨床試験を開始することが決まった。10月13日のポスターセッションで、琉球大学臨床薬理学の植田真一郎氏らが試験の概略を発表。「安価な利尿薬が安心して使えるようになれば、医療経済的にも意義が大きい」と訴えた。

 海外で行われた複数の大規模臨床試験では、利尿薬にカルシウム(Ca)拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬並みの心血管合併症予防効果があることが実証されつつある。また、Ca拮抗薬やACE阻害薬と併用した場合に、降圧効果や合併症予防効果を増強する作用があることもわかってきた。しかし、わが国で高血圧患者に処方される降圧薬は、Ca拮抗薬やACE阻害薬などが中心で、利尿薬の処方率は1割に満たないとされる。

 その理由として植田氏が指摘するのは、「薬価が相対的に安く、ほとんど宣伝が行われないうえ、患者側のコスト意識が希薄だった」点。さらに、「糖代謝などに対する有害反応への懸念があるなか、日本人でのデータが不足しているためではないか」とも考察する。

 しかし、現在推奨されている利尿薬の投与量は、以前の4分の1程度。その量でも降圧効果は十分に得られ、しかも糖代謝や尿酸代謝への影響ははるかに少ないとのデータが海外では得られているという。そこで研究グループは、「新たな糖尿病の発症」を1次評価項目に、利尿薬少量投与の安全性を検証する臨床試験を計画した。

 対象は、20〜84歳の本態性高血圧患者1800人。高血圧の診断基準は、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン「JSH2000」における血圧分類に従う。既に糖尿病や痛風(高尿酸血症)を発症している場合や、勃起障害、腎機能・肝機能障害、6カ月以内の心筋梗塞・脳卒中既往例などは除外する。

 試験形式は無作為化オープン試験で、無作為化の際には体格指数(BMI)と糖尿病家族歴、耐糖能及び参加地域で調整する。利尿薬使用群、非使用群ともに通常の降圧治療を行うが、利尿薬使用群は利尿薬(トリクロルメチアジドまたはインダパミドで1日量1mg相当)を基礎薬に、降圧が不十分な場合は他薬を併用。低カリウム血症が生じた場合はカリウム製剤の投与などで対応する。非使用群はカリウム保持性利尿薬を含む利尿薬以外は、どの降圧薬を使ってもよい。予定患者登録期間は3年間、追跡期間は5年間で、3年目に中間解析を実施。データの管理は京都大学大学院臨床疫学EBM臨床試験支援センターが行う。

 1800人を5年間追跡するという試験設計は、「仮に利尿薬使用群で糖尿病が7%、非使用群で4%発生した場合、80%の検出力で有意差検定ができる」(植田氏)との見通しに基づくもの。両群の安全性や降圧度などが同等だった場合は、費用対効果に関する検証も行うという。

 「“少量の利尿薬”が安全に使えることがわかれば、高血圧患者への第一選択薬として、今よりもっと積極的に使えるようになる。そのためのエビデンスが得られれば」と植田氏は話す。研究グループは、まずは来年1月から小規模のパイロット試験を行い、患者登録やデータのやりとりなどが計画通り進むかを検討するという。


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