2002.10.13

【日本高血圧学会速報】 高血圧は脳血管性痴呆の危険因子、アルツハイマー病とは相関みられず−−久山町研究より

 福岡県久山町の住民を対象とした地域コホートの「久山町研究」で、高血圧を合併した高齢者では、脳血管性痴呆を発症するリスクが2.2倍になることがわかった。一方、海外で複数の報告があるアルツハイマー病との関連は、特に認められなかった。研究結果は、10月13日の一般口演で、九州大学病体機能内科学の谷崎弓裕氏らが発表した。

 解析対象は、1985年に住民健診を受けた久山町住民のうち、65歳以上の887人(受診率:95%)から、痴呆を既に発症していた人を除いた828人。1997年まで前向きに12年間追跡し、健診受診時の血圧と、その後12年間の痴呆発症との関連を調べた。

 久山町研究の大きな特徴は、剖検実施率が極めて高いこと。痴呆との診断は臨床記録やCT所見に加え、剖検所見も加味して行われたが、剖検率は81%に達した。12年間の痴呆発症者は180人で、うち105人が死亡。痴呆の内訳は脳血管性痴呆が46%、アルツハイマー病が42%、両者の混合型痴呆が4%で、残りの7%はレビー小体型痴呆、外傷性痴呆などだった。

 谷崎氏らは対象者を、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン「JSH2000」における血圧分類に従い、1.至適血圧(120/80mmHg未満)、2.正常血圧(130/85mmHg未満)、3.正常高値血圧(130〜139/85〜89mmHg)、4.軽症高血圧(140〜159/90〜99mmHg)、5.中等症・重症高血圧(160/100mmHg以上)−−の5群に層別化。性別、年齢と認知機能(長谷川式簡易知能スケールで評価)、脳卒中の既往、心電図異常、糖尿病、体格指数(BMI)、血清総コレステロールと喫煙・飲酒習慣で補正した後、至適血圧者を基準に痴呆発症の相対危険率を求めた。なお、高血圧はほとんどが収縮期高血圧だった。

 その結果、脳血管性痴呆に関しては、至適血圧の人が最も発症率が低く、軽症高血圧以上で有意に発症率が高いことが判明。軽症高血圧以上の人に降圧薬治療中の人を加えた「高血圧」者では、多変量解析による脳血管性痴呆発症のオッズ比は2.2倍となった。ただし、年齢階級別の分析では、85歳以上の人で血圧との関連は消失した。血圧以外では、脳卒中の既往と年齢も有意な危険因子だった。

 一方のアルツハイマー病は、正常血圧者で最も相対危険率が高く、軽症高血圧者で最も低くなったが、いずれも至適血圧者と比べ有意な差とはならなかった。アルツハイマー病の有意な危険因子は、年齢、性別(女性)と糖尿病の合併で、BMIは“負の危険因子”(BMIが高いほどアルツハイマー病発症率が下がる)だった。

 以上から谷崎氏らは「脳血管性痴呆の発症率は、血圧レベルの上昇とともに増加し、多変量解析でも高血圧は脳血管性痴呆の独立した危険因子であることがわかった」と総括。「JSH2000の血圧分類は、日本人の脳血管性痴呆の発症を予測する上でも有用」とまとめた。


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