2002.10.12

【日本高血圧学会速報】 末期腎不全患者の高血圧治療、心機能の保護には腎機能が犠牲に

 末期腎不全のために腹膜透析を導入した82人の透析患者を長期追跡した研究で、降圧治療により収縮期血圧が20mmHg以上低下した人では、心機能は改善するが残存腎機能はむしろ低下することがわかった。10月12日の一般口演で、埼玉医科大学腎臓内科の中元秀友氏らが報告した。透析患者の血圧管理を行う医師は、今後「心臓と腎臓のどちらを優先するか」という、悩ましい問題に直面することになりそうだ。

 透析患者は脳卒中などの心血管疾患で死亡することが多く、生命予後の改善のためには血圧管理が重要だと考えられている。しかし、透析患者の場合、「血圧をどこまで下げるか」という指標は現時点では確立されていない。そこで中元氏らは、非糖尿病性の腎障害により腹膜透析を開始した末期腎不全患者82人を3年間追跡。カルシウム拮抗薬またはβ遮断薬を基礎薬に、必要に応じて利尿薬を付加して厳格な血圧管理を行い、降圧の幅によって心機能や残存腎機能がどう変わるかを調べた。

 対象患者の平均年齢は56.3歳で、平均収縮期血圧は163mmHg。3年目に外来収縮期血圧が当初より20mmHg以上下がった人(降圧群)は46人、そこまでは下がらなかった人(非降圧群)は36人だった。降圧群の平均降圧幅は約24mmHg、非降圧群は約16mmHgで、3年目の収縮期血圧は降圧群が140mmHg、非降圧群が144mmHgだった。

 心機能に関して降圧群と非降圧群を比べると、左室駆出力(EF)は降圧群で約10%、非降圧群で約5%改善しており、改善幅が降圧群で有意に大きいことが判明(p<0.01)。心エコーで評価した左室重量係数(LVMI)も、3年目に降圧群でのみ有意な減少が認められ、「20mmHg以上の降圧が心機能を改善する」ことが確認できた。

 ところが、1日当たりの尿量は、降圧群で3年間に約440ml減少し、非降圧群の減少量(約270ml)よりも有意に多いことが判明(p<0.01)。腎機能を反映するクレアチニンクリアランス(Ccr)で評価した場合も同様で、降圧群では非降圧群と比べ、有意に残存腎機能が低下することが明らかになった。

 中元氏らは「CAPD患者の場合、血圧を140/85mmHg以下にまで十分に降圧すれば、心機能が改善される。しかし、透析導入後の急激な降圧は残存腎機能の有意な低下につながり得る」と結論。生命予後を考えるなら心保護を優先すべきだが、「はたしてそれでいいのか悩んでいる」と中元氏は述べた。


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