2002.10.12

【日本高血圧学会速報】 ニフェジピン「舌下投与」の代替法が提唱

 昨年の日本高血圧学会における問題提起が一つの契機となり(関連トピックス参照)、このほど添付文書が改訂。舌下投与が事実上“禁忌”となったニフェジピン(商品名:アダラートなど)について、舌下投与に代わる投与法が10月11日のポスターセッションで提唱された。

 提唱されたニフェジピンの新しい投与法は、10mgカプセルに25ゲージの注射針で穴を開け、コップに4滴滴下して30mlの水に溶かし服用させるというもの。「この方法なら、最初の8滴ほどはほぼ安定した量が滴下されることが確認できた。4滴分はちょうどニフェジピン3mgに相当し、水に溶かすことで苦味もなくなる」と、この方法を考案した山陰労災病院循環器科第3循環器部長の太田原顕氏は話す。

 太田原氏らは、山陰労災病院の救急外来を、血圧の急上昇を主訴に受診した患者15人を対象に、この方法の有用性や安全性を検討した。投与前の平均血圧は206/99mmHg、心拍数は毎分78だったが、投与30分後には平均血圧が152/80mmHgにまで下がった。心拍数も73で、少数例・短時間の検討ながら、舌下投与で時にみられる「過度の降圧」や「反射性頻脈」は認められなかったという。

 一方、埼玉医科大学第4内科の野口雄一氏らは、入院中の高血圧患者14人の協力を得て、ニフェジピン10mgを舌下投与した場合の血圧変動や心拍数を4時間後まで測定。うち5人にはニフェジピン10mgの経口投与も行い、降圧度などがどの程度変わるかを調べた。

 すると、意外なことに、血圧・心拍のいずれも、舌下投与と経口投与との間で推移にほぼ差がないことが判明。舌下投与の方が最大降圧がもたらされるまでの時間がやや短く、脈拍が最大になるまでの時間は経口投与の方が長かったが、いずれも有意な差ではなかった。最大降圧幅は、舌下で約50/35mmg、経口で約45/30mmHgで、最大降圧までの経過時間は舌下で約70分、経口で約100分だった。同じ人に複数回投薬した場合、降圧度などのばらつきは経口投与の方が少なかった。

 今回得られたデータが示すのは、ニフェジピンの少量を水に溶かして飲ませる、あるいはカプセルをそのまま服用させることで、従来の舌下投与並みには血圧の急上昇に対処できるということ。しかし、フロアからは「そもそも血圧をこれだけ早く下げる必要があるのか」との問題提起がなされた。

 確かに、こうした病態で血圧をすみやかに下げる医学的な意義は希薄であり、時には有害ですらあることは、多くの医師が周知している。とはいえ、実際の医療現場では「血圧が高くて大変だから早く下げて欲しい」との患者側、看護師側からの要請があることも事実だ。この状況は、一昔前の「小児の解熱」問題を思い起こさせる。

 今でこそ小児の高熱に対し、ルーチンに解熱薬を投与する医療機関は少なくなったが、以前は患者(の親)の要請に応える形で解熱薬の投与が頻繁に行われていた。状況を変えたのは、「熱を下げる必要はないのですよ」と、医療現場で小児科医らが地道な啓蒙活動を続けた結果ではないだろうか。単に「舌下投与」を禁忌扱いにするだけではなく、急速な降圧が不要であることを現場で地道に伝えることも、医療者に求められる時代になったといえそうだ。

 なお、ニフェジピンの添付文書改訂内容は次の通り。「用法・用量」の項から、「なお、速効性を期待する場合には、カプセルをかみ砕いた後、口中に含むか又はのみこませることもできる」との一文を削除。「薬物動態」の項からも、「なお、吸収は迅速で健康成人がかみ砕いて服用した場合、12分後には有効血中濃度に達する。(参考:外国人)」との一文が削除された。

 さらに、「重要な基本的注意」の項に、「なお、速効性を期待した本剤の舌下投与(カプセルをかみ砕いた後、口中に含むか又はのみこませること)は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあるので、用いないこと」との一文が追加されている。

■関連トピックス■
◆ 2001.10.30 再掲】日本高血圧学会速報】ニフェジピン舌下投与の中止勧告、「知らない」医師が8割


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