2002.10.07

【日本心不全学会速報】 心不全患者へのβ遮断薬の早期導入、運動負荷時収縮期血圧が指標として有用

 心不全患者に対するβ(ベータ)遮断薬の早期導入が可能か否かを判定する指標として、運動負荷時収縮期血圧(PsBP;peak exercise systolic blood pressure)が有用である−−。りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の安賀裕二氏らは10月4日、日本心不全学会学術集会のポスターセッション「β遮断薬」で発表した。短期間での導入が可能な患者を簡単に識別できるようになれば、β遮断薬の処方率は今後高まってくるかもしれない。

 安賀氏らがこの発表を行った背景として、慢性心不全症例におけるβ遮断薬の有用性はいくつもの臨床試験で示されているが、実際に使われる例は多くないことが挙げられる。β遮断薬に対する患者の認容性の予測が難しいことや、導入に時間を要するため入院日数が長くなるといったことが、現場で使用が進まない理由の一部と考え、これらの問題点を解消するため、今回の研究を実施したという。

 51人の心不全患者のPsBPを測定し、140mgHg以上だった43人をGR(Good Response)群に、140mgHg未満だった8人をPR(Poor Response)群とした。境界値を140mgHgとしたのは、同グループによる過去の研究で、拡張型心筋症の患者ではPsBPが140mmHg以上だと、生存率が高くなることがわかっているため。

 患者背景については、PsBPはGR群が192.2mmHg、PR群が121.4mmHgであり、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はGR群が126.5pg/ml、PR群が523.0pg/mlで、ともに有意差があった(p<0.001)。このほか、有意差があったのはNYHA心機能分類で、GR群が2.3、PR群が3.0だった(p=0.002)。なお、平均年齢はGR群が55.0歳、PR群が55.8歳、また、男性の割合はそれぞれ84%、88%だった(ともに有意差なし)。

 投薬プロトコルは、GR群の場合、カルベジロール(商品名:アーチスト)1日当たり10mgから始め、三日以内に20mgに増量し、1週間で退院を基本としていた。実際、GR群ではすべての患者で導入に成功し、入院日数は平均7.5日だった。一方、PR群では成功率は63%で、成功者の入院日数は平均26日だった。

 安賀氏は、「PsBPは、心不全患者において、β遮断薬導入に対するリスクを判断するための優れた予測因子となりうる。PsBPが140mgHg以上であれば、β遮断薬を安全に早期導入でき、それゆえ、入院日数を短縮できる」と述べた。また、「PsBPの高さは心臓の予備能が優れていることを意味するため、β遮断薬の早期導入成功率が高くなるのではないか」との考えも示した。

 さらに、安静時収縮期血圧やBNPとの関係を調べたところ、安静時収縮期血圧が90mmHg未満とBNPが600pg/ml以上だと、PsBPは140mmHg未満であったため、同氏は、「β遮断薬の短期間での導入は難しいだろう」と語った。

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