2002.10.04

一酸化炭素中毒への高圧酸素療法、無作為化試験で有用性が実証

 急性一酸化炭素中毒を起こした患者に高圧酸素療法を行うと、後遺症として起こる認知障害の発症率を半減できることがわかった。高圧酸素療法は、一酸化炭素中毒の治療の切り札として多くの臨床現場で行われてきたが、有用性がプラセボ対照無作為化試験で確認されたのは初めて。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌10月3日号に掲載された。

 血液中の酸素は主にヘモグロビンにより運搬されるが、一酸化炭素は酸素よりもはるかにヘモグロビンとの結合力が強い。そのため、一酸化炭素を吸入すると、酸素が脳などの組織に運搬されなくなり、酸欠状態に陥ってしまう。軽いうちは頭痛、吐き気、けいれん、めまいなどの症状を呈するが、一酸化炭素濃度が1%を超えると即死するとされる。

 高圧の酸素は、ヘモグロビンと一酸化炭素を解離させる作用がある。そこで、軽症の患者には100%の酸素を与える一方、意識障害があるなど重症の患者には、2〜3気圧の酸素を満たしたタンクの中で一定時間、何度も過ごさせるという「高圧酸素療法」が試みられてきた。

 米国Utah医科大学呼吸器・集中医療部門のLindell K. Weaver氏らは、一酸化炭素中毒で運ばれてきた患者を無作為に2群に分け、発症24時間以内に3回、一方にのみ高圧酸素療法を実施。もう一方は通常の空気を満たしたタンク内で同じ時間過ごさせるという二重盲検法で、6週間後の後遺認知障害の発生率を比較した。なお、割り付けに当たっては、発症から高圧酸素療法実施までの時間(6時間以上か未満か)と、患者の年齢(40歳以上か未満か)にばらつきが生じないよう調整した。

 両群に76人ずつが割り付けられた時点で、中間解析を行ったところ、予想よりも大きな差があったため患者登録を早期中断。6週間後の後遺認知障害の発生率は、高圧酸素療法群が25%、通常治療群が46%で、高圧酸素療法群で有意に少なかった(p=0.007)。治療前の脳神経障害の重症度などで補正すると、両群のオッズ比は0.45(95%信頼区間:0.22〜0.92)となり、高圧酸素療法で後遺認知障害の発生をほぼ半減できることが明らかになった。

 また、一酸化炭素中毒では遅発性の脳神経障害が生じることがあるが、1年後の時点で認知障害の後遺症が残っていたのは高圧酸素療法群が18.4%、通常治療群が32.9%と、高圧酸素療法群で有意に少なかった(p=0.04)。6週後の自覚症状にも大きな差があり、「ものが覚えられない」と答えた患者の比率は28.0%対51.4%。一方、「集中できない」と答えた比率は32.0%対43.1%で有意差はなかった。

 以上から研究グループは「急性一酸化炭素中毒では、発症24時間以内に3回、高圧酸素療法を行えば、6週後、1年後の後遺認知障害を減らせる」と結論付けた。今回の研究結果は、高圧酸素療法の有用性を議論する時代の終わりを告げるもの。今後は、適切な施行回数や加療時期(therapeutic window)、適用条件といった、より実践的な領域に研究の焦点がシフトするだろう。

 この論文のタイトルは、「Hyperbaric Oxygen for Acute Carbon Monoxide Poisoning」。アブストラクトは、こちらまで。

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