2002.10.03

【日本癌学会速報】 「お酒に弱い」遺伝素因、簡単な問診で9割が把握可能に

 国立アルコール症センター久里浜病院、国立保健医療科学院などの研究グループは、お酒に弱い体質かどうかを9割近い感度・特異度で把握できる「簡易フラッシング質問紙」法を開発、10月1日のポスターセッションで報告した。現在と、お酒を飲み始めて1〜2年の間の二つの期間で、ビールをコップ1杯飲んで赤くなる(フラッシング)かどうかを尋ねるもの。食道癌との関連が知られる遺伝子変異を精度高く把握できるため、「外来診療や疫学研究の場などで、食道癌の高リスク者同定に役立つのでは」と研究グループはみている。

 この研究を行ったのは、厚生労働省「食道がん、頭頚部がんのリスクとアルコール代謝酵素の関連に関する研究班」。アルコール(エタノール)の代謝には、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)が関与しているが、日本人の4割はこの酵素遺伝子が非活性型で、本来は「少しの飲酒でもすぐ顔が赤くなる」体質を持っている。

 しかし、飲酒習慣があるとALDH2が非活性型でも顔が赤くなりにくくなるため、本人はお酒に強いと思い込んでいるケースも多く、問診では正確な把握が難しい。また、ALDH2の活性を調べる簡便な検査として、アルコールパッチテストがよく行われるが、高齢者では皮膚に赤みが出にくく、精度が低くなるとの問題があった。

 そこで研究グループは、「現在」と「飲酒開始から1〜2年間」の二つの時期で、少量飲酒により顔が赤くなるかを尋ねる問診法を開発。40〜79歳の男性に質問を行い、どちらかに「はい」と答えた人を「フラッシャー」と判定して、ALDH2の遺伝子解析結果と比較、食道癌への罹患の有無が精度に影響するかについても評価した。解析対象は、食道癌(診断後3年以内の扁平上皮癌)患者が233人、年齢などをマッチさせた対照群が610人。

 その結果、食道癌に罹患していない人では、この二つの質問により、感度90.1%、特異度95.1%でALDH2遺伝子が不活性型の人を同定できることが判明。「現在赤くなるか」だけを聞いた場合の感度は74.3%、特異度は88.0%であり、「お酒を飲み始めた頃どうだったか」との質問を追加すれば精度を向上できることも明らかになった。

 一方の食道癌患者では、二つの質問による不活性型遺伝子の同定感度は84.0%、特異度は88.7%。「現在赤くなるか」だけを聞いた場合(感度:56.7%、特異度:82.3%)よりも、過去の情報追加で感度は大幅に向上したが、食道癌の非罹患者よりも感度・特異度がいずれも低いことがわかった。

 食道癌患者で精度がやや低くなる理由として、結果を発表した国立アルコール症センター久里浜病院消化器科医長の横山顕氏は「食道癌患者には大量飲酒者が多く、その分“慣れ”が進んでいるためではないか」と分析する。実際、今回の解析対象者でみても、週に18合以上飲む「大量飲酒者」は食道癌患者の45.1%を占め、対照群(14.0%)を大幅に上回っている。

 とはいえ、飲み始めた頃の体質を思い出してもらうことで、食道癌患者でも9割近い精度でALDH2遺伝子のタイプを判定できる「簡易フラッシング質問紙」の意義は大きい。「特に多人数を対象とする疫学研究では、遺伝子解析は予算的にも同意を得る上でも困難なことが多い。そうした場で質問紙を役立ててもらえれば」と横山氏は話している。

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