2002.10.02

【日本癌学会速報】 「緑茶1日10杯」で癌再発予防、“埼玉方式”で介入試験がスタート

 1日10杯の緑茶が癌を予防する−−。この疫学的な知見に基づく、癌の再発予防試験がついにスタートしたことがわかった。10月1日のシンポジウム6「癌の化学予防」で、徳島文理大学薬学部の藤木博太氏が明らかにしたもの。試験には、飲用分の不足を緑茶エキス製剤で補う“埼玉方式”が採用されているが、プラセボを用いない試験であり、試験方法などを巡って今後議論を呼びそうだ。

 藤木氏ら埼玉県立がんセンターの研究グループは、狭山茶で名高い埼玉県の40歳以上の住民8555人を対象に、1986年から緑茶の1日飲用量と癌罹患年齢との関連を前向きに調査。9年間の追跡で、1日10杯以上緑茶を飲む人では、1日3杯以下の人よりも癌に罹患する年齢が男性で3.2歳、女性で7.3歳遅いことを見出したという。

 この知見に基づき、藤木氏らは癌予防に必要な緑茶飲用量を1日10杯と算定。実際の飲用量を、緑茶抽出物を粉末化し錠剤にした「G.T.E」(Green Tea Extract)で補う“埼玉方式”を確立し、健常ボランティア約100人の協力で「生活習慣に影響を及ぼさずに“1日10杯分”の緑茶成分摂取が可能」であることを確認した。人によっては摂取の妨げとなる、カフェイン含有量を減らした「低カフェイン製剤」も開発した。

 藤木氏らは、癌の一次予防には健康食品として「G.T.E」を提供。一方、癌の再発予防効果をみる臨床試験には、同様の緑茶錠剤を無償で提供しており、既に乳癌、前立腺癌、大腸ポリープ、肝臓癌、食道癌の再発予防をみる介入試験がスタートした。

 こうした試験の一つとして、佐賀医科大学では肝細胞癌患者を対象とした無作為化介入試験が行われている。1次評価項目は再発までの期間、2次評価項目は生存期間で、目標症例数は投与群・非投与群が20人ずつ。およそ1年追跡した時点で、服用群9人中再発が2人、非服用群6人中再発が2人認められているという。

 しかし、この試験ではプラセボを設定しておらず、投与群と非投与群に無作為に割り付けるという試験設計。緑茶の癌予防効果を調べるという試験の目的は、当然ながら患者に説明されている。従ってこの形の試験設計では、非投与群に割り付けられた患者が自己判断で緑茶の飲用量を増やす可能性があり、最悪の場合何をみているのかがわからなくなる恐れがある。

 また、観察研究で有望にみえたものがプラセボ対照介入試験では全く有効性が認められなかったり、時には有害であることは、βカロチンの癌予防試験「CARET」やホルモン補充療法の乳癌・心疾患予防試験「WHI」の早期中断でよく知られるところ(関連トピックス参照)。介入試験を行うのであれば、できるだけ不確定要素の少ない方法で、統計学的に意味のある結果が得られる症例数を対象に行い、結果も論文などの形で広く公開されることが倫理面からも不可欠だろう。

■関連トピックス■
◆ 2002.7.11 NHLBIが臨床試験「WHI」を早期中断、ホルモン補充療法に乳癌、心血管疾患の予防効果なし

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