2002.10.02

【日本癌学会速報】 小麦ふすま・乳酸菌は大腸癌を予防するか?、注目の長期介入試験が結果発表

 大阪府立成人病センターが中心となり、小麦ふすまと乳酸菌の大腸癌予防効果を調べた長期介入試験の最終結果が、10月1日のシンポジウム6「癌の化学予防」で発表された。いずれも疫学研究や動物実験で大腸癌発症抑制効果が示唆されていた成分だが、日本で無作為化割付試験が行われたのは初めて。介入試験の成功を占うモデルケースとしても注目されていた。

 結果は、小麦ふすまについてはほぼ完全にネガティブ。小麦ふすまに多く含まれる食物繊維の大腸癌予防効果に関しては、2000年に海外で3報、大規模な無作為化介入試験結果が発表されているが、それらも結果はネガティブであり、その結果を追認する格好となった。一方の乳酸菌に関しては、異型度別の解析でのみ、「異型のできやすいポリープの抑制作用」が認められた。

 ただし、4年間の試験期間で、参加者398人中脱落者はわずか18人と、極めて高い完遂率を達成。群間の患者背景(年齢、性別、癌の家族歴など)にもほぼばらつきがなく、コンプライアンス(摂取継続率)も高いなど、試験設計や実施方法としては非常に上出来で、今後の介入研究実施に当たり大いに参考になりそうだ。

 試験の対象は、大腸内視鏡検査で大腸腫瘍(腺腫または早期癌)が2個以上確認・切除された、40〜59歳の大腸癌ハイリスク者。こうした人では、2年以内に新たな大腸腫瘍が60%以上の確率で出現することが知られている。癌や腸管切除の既往がある人や、家族性大腸腺腫症(FAP)の人は対象から除いた。参加者の平均年齢は約55歳、8割が男性で、6割弱の人に癌の家族歴があった。

 研究グループは、対象者を無作為に4群に割り付け、1.食事指導のみ、2.食事指導+小麦ふすまビスケット、3.食事指導+乳酸菌製剤、4.食事指導+小麦ふすまビスケット+乳酸菌製剤−−の4通りの介入を4年間実施。2年後と4年後に大腸内視鏡検査を行い、介入によって大腸腫瘍の新規発生がどの程度抑制できるかを評価した。

 患者登録は1993年6月から1997年9月にかけて行われ、2002年2月に最終登録者の大腸内視鏡検査を終了している。全員に行った食事指導の骨子は「脂肪摂取の適正化」。総摂取エネルギーに対する脂肪からのエネルギーを18〜22%になるよう、参加時と3カ月目、4年目に、約1時間かけて食事調査と個別指導を行った。

 介入に用いた小麦ふすまビスケット(作製:江崎グリコ、堀井薬品工業)の1日量は25gで、小麦ふすまを7.5g(食物繊維量はAOACプロスキー法で3.1g、うち水溶性0.5g)、フィチン酸を239mg含む。乳酸菌製剤(作製:ヤクルト中央研究所)の1日量は3.0gで、1.0g当たり乳酸桿菌(Lactobacillus caseiシロタ株)を生菌として1.5×109〜2.1×1010含有する。4年間に指定量の7割以上を摂取した人の割合(受容性)は、小麦ふすまビスケットで71%、乳酸菌製剤では88%だった。

 解析対象は、試験参加者398人のうち、死亡や他の疾患などで大腸内視鏡検査を受けられなかった18人を除く380人。2年後と4年後に腫瘍の発生の有無を調べたところ、全体では2年後に6割、4年後に5割強の人で腫瘍が発生していた。しかし、この発生率に、小麦ふすまビスケットや乳酸菌製剤の摂取の有無は影響を及ぼさず、少なくとも4年という期間では両者に腫瘍の新規発生抑制効果が認められないことが明らかになった。小麦ふすまと乳酸菌の“相乗効果”も認められなかった。

 次に研究グループは、腫瘍サイズ、発生した腫瘍の異型度や介入に用いた食品の受容度別に解析を行った。すると、乳酸菌製剤に関して、4年目に「中等度以上の異型腺腫のみの腫瘍」を発生する確率が3割有意に抑制されることがわかった(乳酸菌製剤摂取群:27.1%、非摂取群:39.48%、オッズ比0.69、95%信頼区間:0.48〜0.98)。

 逆に小麦ふすまビスケットについては、摂取群191人中7人(3.7%)が4年目に10mm以上の腫瘍を発生。このサイズの腫瘍は非摂取群からは一人も発生が無く、小麦ふすまの摂取で「大きなポリープができやすくなる」(結果を発表した兵庫医科大学先端医学研究所の石川秀樹氏)恐れが示唆された。小麦ふすまビスケット摂取群からは、急性虫垂炎も2人発生した。なお、介入に用いた食品の受容度と結果には関連がみられなかった。

 乳酸菌製剤でのみ異型ポリープの抑制作用がみられた点について、石川氏は「大腸内に酪酸量が増加することで、プロモーター活性の抑制やアポトーシスの誘導が行われたためではないか」と考察。今後は、大腸粘膜の細胞増殖能や便中の変異原性活性、血清抗酸化物質活性など各種の生物学的指標による解析を進める一方、試験参加者の長期追跡によるコホート解析も行う予定だ。(内山郁子)

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