2002.09.13

喫煙者のアテローム発生、慢性感染で3倍に

 たばこを吸う人が、気道感染症や歯周病などの慢性感染症に罹患していると、頚動脈に粥状動脈硬化(アテローム)が発生する頻度が5年で3倍以上になることがわかった。一方、喫煙者でもこうした慢性感染にかかっていない場合、アテロームの発生頻度は感染症に罹患していない非喫煙者と変わらなかったという。喫煙を介した動脈硬化が、感染症で促進されることを示した疫学データは初めて。研究結果は、Stroke誌9月号に掲載された。

 この研究を行ったのは、オーストリアInnsbruck大学病院神経科のStefan Kiechl氏ら。Kiechl氏らは、イタリアBruneckに住む40〜79歳の男女826人を追跡し、喫煙、慢性感染とアテロームの新規発生との相関を調べた。超音波診断装置で頚動脈を定期的に調べ、狭窄が40%を超えた場合をアテロームの新規発生と定義した。

 対象者の54.8%は非喫煙者、25.7%は元喫煙者で、19.5%が現在も喫煙していた。平均年齢は非喫煙者と元喫煙者が約59歳で、現喫煙者が54歳とやや若い。男性比率は非喫煙者が3割、元喫煙者が約8割、現喫煙者が7割弱。

 気道などの慢性感染には268人が罹患しており、最も多いのが慢性閉塞性肺疾患(COPD)に伴う再燃性感染(141人)で、次いで慢性気管支炎(86人)、慢性・再燃性尿路感染(34人)や歯周病(19人)が続いた。慢性感染の罹患率は、非喫煙者が最も低く26.4%で、現喫煙者では45.5%とおよそ二人に一人の割合。元喫煙者はその中間で、喫煙年数が長いほど罹患率が上がる傾向があった。

 5年間の追跡期間で332人がアテロームを発生したが、発生率は喫煙や慢性感染の罹患と深く関連していることが判明。年齢や性別、血清脂質、喫煙・飲酒量などで補正した後も、非感染・非喫煙者を基準とした場合、感染・喫煙者のアテローム発生率は3.3倍、感染・元喫煙者では3.4倍と有意に高くなった。

 興味深いのは、たとえ喫煙者や元喫煙者でも、慢性感染に罹患していなければ、アテロームの発生率は非感染の非喫煙者と変わらない点だ(オッズ比は順に1.4と0.9、いずれも有意差なし)。「たばこを吸っても、慢性感染にかからなければ動脈硬化性疾患にはなりにくい」とも解釈できるデータだ。

 しかし、喫煙がCOPDや歯周病など、各種の慢性感染や易感染状態になる危険因子であることも事実。いったん慢性感染にかかったら、動脈硬化性疾患を起こすリスクが跳ね上がることを、喫煙者はよく頭に入れておく必要があるだろう。

 この論文のタイトルは、「Active and Passive Smoking, Chronic Infections, and the Risk of Carotid Atherosclerosis」。アブストラクトは、こちらまで。

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