2002.09.12

AMI後ハイリスク患者の死亡率、ロサルタンとカプトプリルで有意差出ず−−OPTIMAAL試験より

 急性心筋梗塞(AMI)後のハイリスク患者約5500人を対象とした無作為化比較試験で、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬のロサルタン(わが国での商品名:ニューロタン)の死亡率抑制効果は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のカプトプリル(わが国での商品名:カプトリルなど)と“同等またはそれ以上”とは言えない−−。欧州心臓学会(ESC)で9月2日に発表された、「OPTIMAAL」(Optimal Trial in Myocardial Infarction with the Angiotensin 2 Antagonist Losartan)試験の結果だ。

 ACE阻害薬は既に様々な試験で、こうした患者に対する生命予後改善効果が示されており、「統計学的な有意差はないものの、死亡率はカプトプリル群の方が少なかったことを鑑みると、今後もこうした患者に対してはACE阻害薬を第一選択とするべきだ」と研究グループは結論付けている。研究結果は9月1日からLancet誌のホームページ上で早期公開され、同誌の9月7日号に掲載された。

 欧米では、AMI後に心機能が低下し、心不全を合併する患者が少なくない。こうした人では死亡率が高く、この層の患者の生命予後を改善する治療が模索されてきた。OPTIMAAL試験もそうした研究の一つだ。

 対象患者は、AMI後の急性期に心機能の低下を疑わせる症状や徴候がみられた50歳以上の5477人。AMI発症前にA2受容体拮抗薬やACE阻害薬を既に服用していた人は対象から除外しており、「AMI発症前から心不全に罹患していた人は比較的少ないと考えられる」(研究グループ)。対象患者の平均年齢は67.4歳、男性が約7割で、前壁梗塞が7割を占め、2割弱の人にはMIの既往があった。心不全の合併者は8割。

 研究グループは、AMI発症後10日以内に対象患者を登録、無作為に2群に分け、通常治療に加えカプトプリル(上限50mg1日3回)またはロサルタン(上限50mg1日1回)を処方した。1次評価項目は総死亡で、死亡者が946人に達するまで中央値で2.7年間追跡した。解析は脱落者も含めたintent-to treat(ITT)形式で行った。

 その結果、総死亡率はロサルタン群(2744人)が18%、カプトプリル群(2733人)が16%で、有意差はない(相対リスクの95%信頼区間:0.99〜1.28、p=0.07)もののカプトプリル群の方が死亡率が低い傾向があることが判明。この差は主に心血管疾患死によるものだった。時期別の解析では、死亡率の差は主に亜急性期に現れることも明らかになった。試験開始後210日までの総死亡の相対リスクは1.24(95%信頼区間:1.04〜1.50)で、210日以降は1.02(同:0.86〜1.22)だった。

 また、2次評価項目の「突然死または心停止からの蘇生」「致死性・非致死性の虚血再発」にはいずれも有意差がなく、再入院率にも有意差は認められなかった。なお、薬の忍容性を反映する「脱落率」は、ロサルタン群で有意に低かった(17%対23%、p<0.0001)。

試験“失敗”の理由はロサルタンの投与量か、「HEAAL」試験の結果待ちに

 1次評価項目に有意差が出ず、帰無仮説が棄却できなかったという意味でこの試験は“失敗”とみなせるが、その理由として研究グループは「ロサルタンの投与量上限が低すぎたのでは」と考察する。

 これまでに結果が出たロサルタンの大規模試験四つのうち、有意差が出た2試験、つまり「RENAAL」(Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin 2 Antagonist Losartan)と「LIFE」(Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension)とでは、ロサルタンの1日量上限は100mg。一方、有意差が出なかった2試験、「ELITE 2」(Evaluation of Losartan In The Elderly 2)と今回の「OPTIMAAL」とでは、1日量上限が50mgと半量であるためだ。

 この点に関しては、心不全患者を対象にロサルタンの1日量50mgと150mgとを比較する「HEAAL」(Heart Failure Endpoint Evaluation with the Angiotensin 2 Antagonist Losartan)試験が進められており、その結果が待たれる。

 また、ロサルタンと同じA2受容体拮抗薬のバルサルタン(わが国での商品名:ディオバン)に関しても、OPTIMAALとほぼ同じ患者層が対象で、対照薬も同じカプトプリルを用いた「VALIANT」(VALsartan In Acute myocardial infarctioN Trial)試験が進行中。この試験の結果が出れば、AMI後のハイリスク患者に対し、A2受容体拮抗薬がACE阻害薬を代替しうるか、薬剤や投与量による差はあるのかという積年の疑問に一定の回答が与えられるだろう。

 この論文のタイトルは、「Effects of losartan and captopril on mortality and morbidity in high-risk patients after acute myocardial infarction: the OPTIMAAL randomised trial」。現在、こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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