2002.09.06

【EASD学会速報】 “子宮内環境”が糖尿病発症を左右する?、動物実験で確認

 糖尿病の遺伝的素因を持たないラットの受精卵(胚)を、糖尿病になりやすいラットに移植して生まれた子供は、“代理母”と同じくらい空腹時血糖値が高く、耐糖能にも異常が現れることがわかった。子宮内環境が糖尿病の発症につながり得ることを示すデータで、9月5日の一般口演「Pregnancy and Fetus」で報告された。

 疫学研究では、低体重で生まれた子供、つまり子宮内で十分に発育できなかった子供では、後に2型糖尿病などを発症するリスクが高いことが報告されている。糖尿病発症の環境因子として“子宮内環境”への関心を一気に高めたデータだが、「低体重での出生」と「2型糖尿病の発症」とに共通の遺伝的素因がある可能性もあり、明確な結論は出ていなかった。

 そこで、英国Wales大学のJ. C. Alcolado氏らは、異なる2系統のラットを用いた「借り腹実験」を行った。実験には、遺伝的に糖尿病になりやすいGoto Kakizaki(GK)ラットと、特に糖尿病の素因を持たないウィスターラットを用いた。

 Alcolado氏らはまず、GKラット同士を掛け合わせて純血のGKラットの受精卵を採取し、ウィスターラットに移植した。生まれた子供が6カ月に育った時点での空腹時血糖値を調べると、同じ年齢のウィスターラットよりも高く、GKラット並みで、「子宮内環境に問題が無くても、遺伝的素因を持てば糖尿病を発症し得る」ことが示唆された。

 次にAlcolado氏らは、ウィスターラット同士を掛け合わせて受精卵を採取し、GKラットに移植して子供を生ませた。すると、この子供には糖尿病になりやすい遺伝的な素因はないにもかかわらず、空腹時血糖値がGKラット並みに高いことがわかった。グルコースを静注して耐糖能を調べると、ウィスターラットはおろか、GKラットよりも悪いことが明らかになった。

 このことからAlcolado氏らは「遺伝的素因を持たなくても、糖尿病の素因を持つラットの子宮内で育つことで、糖尿病への感受性が高まり得る」と結論付けたが、この実験には落とし穴がある。「受精卵移植で生まれる」ということ(移植操作)が、糖尿病への感受性を高めている可能性を否定できないのだ。

 Alcolado氏は「真の対照群とすべきなのは、ウィスターラット同士を掛け合わせた受精卵を、ウィスターラットに移植して生ませた子供」と述べ、「1週間前に移植を行ったので、近く研究成果を報告できると思う」と話した。また、子宮を貸したラットは、生まれた子供に授乳も行うため、Alcolado氏は「糖尿病感受性に授乳が与える影響についても今後調べたい」と述べた。

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