2002.09.06

【EASD学会速報】 β遮断薬が低血糖後のQTc延長を抑制、1型糖尿病患者で確認

 1型糖尿病患者では、夜間の低血糖によって致死性の不整脈が引き起こされることがあるが、β遮断薬を服用することで、不整脈の誘発を抑制できる可能性が出てきた。1型糖尿病患者を対象とした介入試験でわかったもので、研究結果は、9月5日の一般口演「Hypoglycaemia」で、英国Northern General Hospital臨床科学部門のS. P. Lee氏らが発表した。

 1型糖尿病患者はごくまれに、夜間に突然亡くなることがある。多くのケースで、死亡する1カ月ほど前から夜間に低血糖を起こしていたことがわかり、低血糖と突然死とに深い関連があると考えられてきた。その後、健常人にインスリンを注射して低血糖状態にした実験で、致死性不整脈の指標となる、心拍数で補正したQT間隔(QTc)が延長することが判明。交感神経を抑制するβ遮断薬を事前に服用すると、低血糖によるQTc間隔の延長が抑えられることもわかった。

 しかし、糖尿病患者では神経に障害が及んでいることがあり、健常人と同じようにβ遮断薬が効くかどうかはわからない。そこでLee氏らは、1型糖尿病患者8人の協力を得て、実験的に低血糖状態にした時に糖尿病患者でもQTcが延長し、β遮断薬の服用でそれを抑制できるかを調べた。

 実験に協力した患者の平均年齢は35歳で8人中7人が男性。平均罹病期間は15年で、体格指数(BMI)は24、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の平均値は9.2。実験は4週以上の間隔を空けて2回行い、うち1回は実験に先立ちβ遮断薬を1週間服用してもらった。実験に用いたβ遮断薬はアテノロール(わが国での商品名:テノーミンなど)で、1日量は100mgとした。

 実験では、まずインスリン投与で低血糖状態を起こし、次にグルコースを静注して徐々に普通の状態に戻した。β遮断薬服用時の血糖の変動は、何も服用しなかった場合と変わらなかった。心拍数はβ遮断薬服用時に有意に低く、血圧も低い傾向があった。何も服用しなかった時には、低血糖状態で指のふるえが起きたが、β遮断薬服用時には起こらなかった。これらはよく知られているβ遮断薬の効果だ。

 焦点となるQTc間隔は、何も服用していない場合、低血糖状態でやや延長し、通常の血糖状態に戻る時に大きく延長。β遮断薬を服用した場合もQTc間隔の延長は認められたが、その増分は何も飲まない時(約60ms)より有意に少なく、約30msとほぼ半分だった。ただし、カリウム値は両群とも実験中に同程度低下した。

 以上からLee氏らは、1型糖尿病患者でも確かに低血糖でQTcの延長が誘発され、β遮断薬の服用でそれを抑制できると結論。突然死のハイリスク者を拾い出すことさえできれば、β遮断薬で突然死の予防が可能になり得ると述べた。だが、「夜間低血糖が死の1カ月前から増える」との手掛りで、どの程度ハイリスク者を拾い上げられるかはわかっていない。今後は、ハイリスク者のスクリーニング手法についての研究にも注目が集まりそうだ。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師のあこがれ? 「ブラックカード」の魅力 Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:1
  2. 女子マネ死亡…AEDを巡る論争に言いたいこと 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:737
  3. 全身脱力の26歳男性の診断は? 徳田闘魂道場にようこそ〜国家試験と臨床との架け橋〜 FBシェア数:13
  4. 山梨市長逮捕で「医学部裏口入学」を考える 中山祐次郎の「切って縫うニュース」 FBシェア数:37
  5. ガイドラインを引用する訴訟が急増しています 特集◎医療訴訟の落とし穴《インタビュー》 FBシェア数:57
  6. 70歳代男性。残尿感 日経メディクイズ●腹部エコー FBシェア数:2
  7. インスリンの2回打ちって、もう古い? シリーズ◎岩岡秀明の糖尿病よろず相談所【藤沼康樹編】 FBシェア数:106
  8. 「説明を尽くしたのに敗訴」のなぜ 特集◎医療訴訟の落とし穴《動向編》 FBシェア数:513
  9. 医局に入ったら生涯収入が減るものと覚悟せよ Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:161
  10. 特集「『説明したのに敗訴』のなぜ」が生まれたわけ 編集会議 on the Web FBシェア数:130