2002.09.05

【EASD学会速報】 2型糖尿病の発症予防の鍵は「減量」、1kgやせればリスクが13%低下−−DPP試験より

 耐糖能異常(IGT)があり、空腹時血糖値も高く、しかも太っている−−。そんな人が2型糖尿病にならないためには、減量が最も効果的であることが、DPP試験の最新解析から明らかになった。9月4日に行われたシンポジウム「The Value of Pharmacological and Non-Pharmacological Interventions for the Prevention of Type 2 Diabetes」で、米国California大学Los Angeles校糖尿病センターのM. Saad氏が報告した。

 DPP試験(Diabetes Prevention Program)は、前述の2型糖尿病ハイリスク者約3200人を対象に、米国で行われた介入試験(関連トピックス参照)。2型糖尿病の3年発症率が、強力な生活指導で6割、標準的な生活指導に加え、ビグアナイド系薬のメトホルミン(わが国での商品名:メルビン、グリコランなど)の服用で3割、それぞれ低下することを立証した試験として名高い。

 今回発表されたのは、こうした介入が「どのような人により有効か」という解析。対象者の平均年齢は51歳で女性が68%、45%が非白人で、平均体格指数(BMI)は34と、かなりの肥満。Saad氏らは、年齢や性別、人種、BMI、空腹時血糖値など様々な要因について、介入の効果との関連を調べた。

 その結果、メトホルミン+標準的生活指導群では、1.空腹時血糖値が高い、2.75gブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値が高い、3.BMIが35を超える、4.若年(25〜44歳)−−という条件を一つ以上満たす人で、強力な生活指導群並みの効果が現れることが判明。逆に、空腹時血糖値やOGTT2時間値が低い人、BMIが25〜30の人や60歳以上の高齢者では、標準的生活指導に加えプラセボを飲んだ人との間で差が出ず、薬の効果は現れなかった。

 一方、強力な生活指導を受けた人の中では、1.高齢(60歳以上)、2.腹部周囲径が細い、3.空腹時インスリン量が少ない、4.空腹時血糖値が低い、5.ヘモグロビンA1c(HbA1c)が低い−−の5条件を一つ以上満たす人で、2型糖尿病の発症予防効果が特に高くなった。

 「最も興味深いのは、“どの程度減量できたか”が、2型糖尿病発症予防の一番主要な予測因子であった点だ」とSaad氏。標準的生活指導(+プラセボ)だけでは体重はほとんど減らなかったが、メトホルミンを服用した人では平均2kg、強力な生活指導を受けた人では6カ月後の7kg減をピークに最終的には当初より5kg体重が減った。この減った体重の重さと2型糖尿病発症率とにはきれいな相関があり、「体重を1kg落とせば、2型糖尿病の発症リスクを相対的に13%減らせる」(Saad氏)ことが明らかになったという。

糖・脂質代謝や心血管危険因子もやや改善、減量が主因か

 さらにSaad氏は、糖・脂質代謝や心血管疾患危険因子に対する各介入の効果についてもデータを提示。空腹時インスリン量は標準的生活指導のみ群で1μU/ml増えたのに対し、標準的生活指導+メトホルミン群で2μU/ml、強力な生活指導群で4μU/ml低下し、介入によりインスリン感受性がやや向上することがわかった。

 血圧はプラセボ群、メトホルミン群共に1/1mmHg低下し、強力な生活指導では3/3mmHg低下した。脂質代謝への効果は、総コレステロール値はどの群も3〜4%程度しか下がらなかったが、トリグリセリド(中性脂肪)値はプラセボ群の5%、メトホルミン群の3%低下に対し、強力な生活指導群では15%の低下が認められた。

 介入の種類によるこれらの効果の違いについて、Saad氏は「減量度の違いが反映されているのだろう」と統括したが、発表後にフロアからは「体重で補正したデータはあるか」との質問が出された。これに対しSaad氏は「現在解析を進めているところ。6カ月以内に論文発表できるだろう」と答えた。

 Saad氏の“減量主因説”には懐疑的な聴衆も少なくなかったようで、「強力な生活指導でも体重が減らなかった人では、本当に糖尿病の発症予防効果はなかったのか」との質問も出された。Saad氏は「最も重要な効果は減量で、運動してもやせなかった人では効果がなかった」と答えたが、別の質問者からは「減量だけがエフェクターと考えるには、ピーク時でも7kgの減量というのは少なすぎるのではないか」とのコメントも出された。

 また、「強力な生活指導を行うにはどれだけのコストがかかるのか」という、DPP試験の結果を臨床に取り入れる上で欠かせない質問も出された。これに対しSaad氏は、「およそ一人当たり2万5000ドル(約295万円に相当)かかった」と回答、近くJournal of American Medical Association(JAMA)誌に費用分析に関する論文が掲載されると述べた。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.2.13 生活指導やビグアナイド系薬でハイリスク者の糖尿病発症が抑制−DPP試験より

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