2002.08.20
「健保連のTVコマーシャルに憤り」に対して
5月29日にオンエアしました「健保連のTVコマーシャルに憤り」に対して意見が届きました。以下に紹介します。ご意見は編集部までメールにてお寄せください。
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タブーに触れる発言ゆえ、匿名をお許し下さい。
健保連の投稿、まさにそのとおりなのですが・・・。読者の方々、「健保連云々」の投稿にレスポンスされないようですね。諸氏、賛同・反論それぞれの感想を抱いても、「処方のみ診療の禁止」という正論の前で舌鋒が鈍る医師が少なくないのではないでしょうか。
「内科標榜医」を中心に、この「処方のみ診療」を安定収入源にしているのが正直なところの医師がかなりいるはずです。実際にはこれに、診てもいないのにいわゆる「指導料」など付加コストを付け足して・・・。
つまりこれこそが無駄な医療費増大を招いている要因の一つであり、今日国策として強引にでも医療費抑制策を導くことになった遠因の一つでもあるわけです。
中身のない「お医者さんごっこ」ともいうべき診療レベル、金勘定の為に優先される各種検査、「だらだら通院」そして「薬の利ざや」。1年中処方し続けて、実際患者と顔を合わせるのは年に数回という事例も。
点数が高くなった途端に往診に精を出すようになり、あえて必要以上に往診の形で診療する医師も。いわば「出前」診療で小賢しく稼ごうとする。
で、その間の外来患者には留守番の職員が、カルテ記録を元に医師不在のまま前回と同じ処方薬を患者に渡す・・・。こういうことが陰の現実の一端です。
そうでなければ、内科診療所の年間収益が平均で約1億円などという数字は生まれるわけがありません。
年間1億という数字は、仮に年間300日診療したとして1日30万強、これは1患者一回受診につき5000円×60人以上でようやく届く数字です。平均して60人の患者が常に全ての診療所に受診しているものでしょうか。
また、片っ端から3割負担として平均1500円もの自己負担を毎回払い、通い続けるものでしょうか。患者は行かなくなってしまいます。となると、単価を下げることとなり、一日80人、100人とならなければ年間1億という数字は困難です。不可能な数字ではありませんが、すべての医療機関で達成できる数字とは思えません。
初診時はともかくとして、再診患者の率が高い場合、手術手技を持たない内科などでは相当に検査などを行わねば、あるいはは利ざやのある処方をし続けなければ、この数字は出せないはずです。それほどに検査の必要な患者ばかりが、すべての診療所
に普遍的にいるとみるのも極めて非現実的です。
翻って、「本当に診療を受けている患者数」は年間平均で40〜50人もどうかという診療所が大半ではないでしょうか。
近辺で目の当たりにしている内科のほとんどはこのくらいが現実です。実際、まともな内科診療を行うにはこのくらいが妥当な数でしょう。
診療時間を8時間として、50人診ると一人10分弱です。これが一人5分になってようやく100人です。入れ替え時間などを考えれば実質3分といったところでしょうか。
日本中全ての内科医が、平均5分以下で連日100人をさばき続けている医者ばかり、
などとありえるでしょうか。
つまり、カラ診療・カラ請求が相当に無ければ、全ての内科診療所で年平均1億円
などという数字はあり得ないのです。「処方のみ診療」は、実際に医者が時間を割かずに処理できる「受診」であり、患者も「待たなくて済む」と時間の効率を好む者が少なくありません。
この間違った考え方の延長上に、先の健保連のような物言いが生じるわけですね。
医者が「楽して効率よく儲ける」悪しき慣習の一つが「処方のみ(+指導料)診療」です。
今や患者にとってもこの図式が「常識」と化していて、逆に「診療無くして処方せず」の私などは変わり者、患者にとって「不便」な頑固者、と陰口を言われる今日この頃です。そりゃ事情に応じて100件に一つくらいの例外がないわけではありませんが・・・。
健保連の物言いはそれはそれで問題ですし、今日の医療制度改革にまるっきり賛成というわけではありません。
しかし、今の医療の現実の中に、そこまでしないと駆逐できない、もっと具体的に指弾されるべき「医療の実態」があるのもまた事実であります。改革策には、そういう「ズル」が少しでもやりにくくなるように、という本音も読みとれる気がします。
今までは、バカ正直が損をしてきました。これからは、「本物」だけが生き残る時代になるのです。
読まれる方によっては挑発的な言い方と映るでしょう。しかし、現実の暗部を曝露すればこの程度のことと、あまりにも当たり前に横行しているのです。「自分はしていない」方でも、「そういう事例を全く知らない」方は皆無ではありませんか。ある意味、そういう医師には「いい時代」だったのです。
その時代にはびこり、今も生き残っている「恐竜」は、早晩絶えざるを得ないのです。時代が進化するとき、大絶滅は繰り返されました。恐竜時代から、新たな時代に生き延びるのは、進化を果たした者だけだったのです。
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