2002.08.20

SSRIのセルトラリンは心筋梗塞既往者にも安全、SADHART研究で判明

 急性心筋梗塞や不安定狭心症の発症後にうつ病を合併した約400人を対象に行われた臨床試験で、選択的セロトニン受容体拮抗薬(SSRI)の塩酸セルトラリンが「安全」であることがわかった。心筋梗塞など急性冠症候群(ACS)患者に対する、抗うつ薬の安全性が確認されたのは初めて。研究結果は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌8月14日号に掲載された。

 急性心筋梗塞の発症後、約2割の患者が大うつ病(MDD)を合併するとされる。複数の疫学研究で、MDDの合併者はその後の死亡率が高いことが確かめられており、「心筋梗塞後のうつをいかに治療するか」は臨床上の重要な課題だ。

 しかし、三環系抗うつ薬など古いタイプの抗うつ薬には心毒性があり、心疾患の既往者への処方は禁忌となっている。一方、新しいタイプの抗うつ薬であるSSRIは、三環系抗うつ薬と比べると心毒性が低いとされるが、過去に行われた臨床試験では対象から心疾患既往者が除かれており、「心疾患既往者でも本当に安全か」は確認されていなかった。

 そこで、米国New York州精神医学研究所のAlexander H. Glassman氏らは、米国、欧州、カナダとオーストラリアの40施設による多施設共同プラセボ対照試験「SADHART」(Sertraline Antidepressant Heart Attack Randomized Trial)を実施。ACS発症後にMDDを合併し、2週間のプラセボ処方期間(run-in期間)後もMDDの症状が続いていた369人を無作為に2群に分け、プラセボと比較した場合の塩酸セルトラリンの安全性と有用性を評価した。

 対象患者の平均年齢は57.1歳で64%が男性であり、4分の3に心筋梗塞、4分の1に不安定狭心症の既往がある。MDDの重症度を示すハミルトン抑うつスコア(HAM-D)の平均値は19.6。投与量は症状に応じて1日50〜200mgの範囲で調整し、連日投与した後24週目に評価を行った。

 その結果、1次評価項目である安全性(左室駆出力=LVEFや心電図のQTc間隔などで評価)は、プラセボ群と実薬群との間に有意差がなく、心毒性という観点では塩酸セルトラリンがACSの既往者にも安全に使えることが判明。2次評価項目である抑うつの改善度は、臨床包括改善度スケール(Clinical Global Impressions-Inprovement scale;CGI-I)で評価した場合は有意な改善が認められたが、HAM-Dでは有意差が出なかった。

 興味深いのは、統計学的には有意な差とはならなかったものの、SSRIの処方を受けた患者で「死亡または心疾患による緊急入院」率が低い傾向が認められた点だ。相対的なリスク低下率は約20%と「(ACS後によく処方される抗血小板薬の)クロピドグレル並み」(Glassman氏ら)で、今回の試験ではサンプルサイズが小さすぎるため有意差は出なかったが(必要症例数は4000)、うつ病合併ACS患者の予後をSSRIが直接改善し得る可能性が示唆されたと研究グループは強調している。

 この論文のタイトルは、「Sertraline Treatment of Major Depression in Patients With Acute MI or Unstable Angina」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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