2002.08.07

糖尿病性早期腎症の食事療法、蛋白の「質」による治療効果に差なし

 一般に動物性蛋白よりも植物性蛋白の方が腎臓に与える負荷が少ないとされるが、早期腎症を合併した糖尿病患者を対象とした厳密な試験で、腎機能はもとより血清脂質、血圧、血糖コントロールにも差が出ないことが明らかになった。研究結果は、Diabetes Care誌8月号に掲載された。

 糖尿病性腎症の初期(早期腎症)では、尿中に微量のアルブミン(分子量の小さい蛋白)が放出され、血圧が上がり始める。この段階からアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬でレニン−アンジオテンシン系を抑制すれば、末期腎不全への進行を抑えられることがわかり、「早期からの介入」が大きな注目を集めている。

 こうした薬物療法と並び、基本的な介入手段として行われるのが食事療法だ。総摂取カロリーを制限する糖尿病の食事療法に、蛋白と食塩の過剰摂取を避ける「早期腎症の食事療法」が加わる。他の腎臓病の食事療法と同様、植物性蛋白の方が動物性蛋白より腎臓に与える負荷が少ないとされるが、複数の介入研究で相反する結果が報告されており、明確な結論は出ていなかった。

 そこで、米国Indiana大学糖尿病研究・教育センターのMadelyn L. Wheeler氏らは、総カロリーや炭水化物、脂肪、カルシウム、ナトリウム(食塩)量を同一にし、蛋白の量も同一で、蛋白の質のみを変えた2種類の治療食を作製。早期腎症の2型糖尿病患者17人に協力してもらって臨床試験を実施した。試験は6週ずつ、クロスオーバー(前半と後半で摂取する治療食の種類を入れ替える)形式で行った。

 試験に協力した患者の平均年齢は56歳、17人中14人が男性で、糖尿病の罹病歴は平均7年。体格指数(BMI)は平均33.1、平均体重は102.3kgと、日本人の典型的な糖尿病患者と比べてかなり大柄だ。ヘモグロビンA1c(HbA1c)値は8.8%で、糖尿病の食事療法は全員に行われており、経口血糖降下薬も一人を除いて服用している。血圧は平均151/85mmHgで、17人中8人がレニンーアンジオテンシン系抑制薬を服用していた。尿中の微量アルブミン量は平均83μg/ml。

 治療食の1日総カロリーは2500kcalで、総カロリーの17%を蛋白、53%を炭水化物、30%を脂肪から摂取するよう組み立てた。蛋白の総量は107g(平均体重1kg当たり1.0g)で、「植物性蛋白食」では全量を植物性蛋白、「動物性蛋白食」では全量の6割を動物性蛋白、4割を植物性蛋白で構成した。食事はセンターの厨房で調理し、1週間分をまとめて宅配した。

 その結果、早期腎症の指標となるアルブミン尿中排泄速度(AER)やアルブミンの糸球体ろ過率(GFR)、腎血清流量(RPF)は、どちらの食事を摂った期間でも変わらず、「植物性蛋白食の方が優れているのでは」とのWheeler氏らの期待を裏切る結果となった。植物性蛋白が良い作用を及ぼすとされる、総コレステロール値や高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の変動も、2種類の治療食による差はなかった。

 ただし、総コレステロール値そのものは、どちらの治療食を食べた期間でも有意な低下が認められた。HbA1cや拡張期血圧も有意に改善した。体重は、植物性蛋白食を食べた期間で平均2.6kg、動物性蛋白食で平均1.7kg、それぞれ減少したが有意差はなかった。

 この結果が示唆するのは、植物性蛋白のみを含む食事を摂っても、総蛋白量など他の栄養素や総カロリーが同じなら、6週間という期間では動物性蛋白を含む食事と「腎保護作用」には差が出ないということ。さらに、血清脂質や血糖コントロール、血圧管理という点では、「どの種類の蛋白を食べるか」よりも「きちんと治療食を食べる」ことの方が重要だということだ。
 
 もちろん、蛋白源として豆腐や納豆など植物性蛋白を豊富に含む食品を取り入れると、動物性蛋白源である肉に含まれる飽和脂肪酸や総カロリーを抑える効果が期待できる。とはいえ、食事は人間にとって大切な楽しみの一つ。食事療法を継続する上で妨げにならないよう、蛋白の「質」にこだわりすぎないことも大切なようだ。

 この論文のタイトルは、「Animal Versus Plant Protein Meals in Individuals With Type 2 Diabetes and Microalbuminuria」。アブストラクトは、こちらまで。

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