2002.08.05

2型糖尿病の血糖・合併症コントロール、患者の「健康知力」も重要な要素に

 2型糖尿病患者約400人を対象とした調査で、血糖値のコントロール状況や合併症の発症率が、患者の「健康知力」(Health Literacy)に相関することがわかった。慢性疾患の管理状況に、健康知力が関与していることが示されたのは初めて。わが国でも「健康増進法」が成立するなど(関連トピックス参照)、健康保持に対する“正しい知識”の普及が目されているが、情報提供だけでなく情報を理解し適切な行動に移す能力を伸ばすことも大切となりそうだ。研究結果は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌7月24/31日号に掲載された。

 健康知力は、医師や看護師、薬剤師などの説明を理解し、自立的に疾患管理や健康増進を行うための総合的な能力。単純な読み書き能力に加え、健康に関する複数の知識を統合して行動につなげる高度な複合的能力が必要となる。糖尿病など患者の自立的な疾患管理が必要となる生活習慣病では、当然ながらこの健康知力が予後を左右すると考えられるが、概念そのものが新しく評価法も定まっていないため、疾患管理状況と健康知力との関連を直接調べた研究は行われていなかった。

 米国California大学San Francisco校のDean Schillinger氏らは、英語またはスペイン語を話す30歳以上の2型糖尿病患者408人を対象に、健康知力を総合的に評価する「成人機能健康知力検査」(short-form Test of Functional Health Literacy in Adults;s-TOFHLA)を実施。長期的な血糖管理状況を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)値や、糖尿病性網膜症などの合併と、健康知力のスコアとの相関を調べた。

 対象患者の平均年齢は58.1歳で、女性が約6割を占める。健康知力は年齢、性別、人種、学歴、使用保険、母語や治療内容(食事療法のみ、経口血糖管理薬、インスリン単独、インスリン・経口血糖管理薬併用)など様々な要素と相関が認められた。ただし、最終学歴が高校未満でも健康知力が高い人がいる一方、大卒でも低い人がいるなど、単純に学歴を反映するものではなかった。

 Schillinger氏らは、s-TOFHLAのスコアに基づき、健康知力が「十分」「境界域」「不十分」の3群に分けて解析を行った。その結果、年齢や性別、治療内容など他の因子で補正した後も、健康知力が不十分な人(156人)では、HbA1c値が適正域(7.2%以下)に管理されている比率が有意に低いことが判明。健康知力が十分な人(198人)と比べた場合の調整オッズ比は0.57(95%信頼区間:0.32〜1.00)となった。

 同様に、血糖コントロールが悪い(HbA1c値が9.5%以上の)人の比率も、調整オッズ比で2.03(95%信頼区間:1.11〜3.73)と有意に高くなった。糖尿病性網膜症は対象患者の4人に一人が合併していたが、合併の調整オッズ比は2.33(95%信頼区間:1.19〜4.57)で、やはり健康知力が不十分な人で高くなった。

 今回得られたデータが示唆するのは、糖尿病などの生活習慣病を管理する上で、患者の健康知力が成否を決める重要な要素の一つであるということ。診療に当たっては、一律な情報提供ではなく、健康知力に応じた個別の対応が欠かせないことを示すものと言えよう。同時に、未確立な分野ではあるが、健康知力を高める取り組みも今後は重視されるようになりそうだ。

 この論文のタイトルは、「Association of Health Literacy With Diabetes Outcomes」。アブストラクトは、こちらまで。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.29 健保法等改正法と健康増進法が今国会で成立

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