2002.07.28

【日本骨代謝学会速報】 「骨髄間葉系細胞」による軟骨再生、培養系確立も病態解明や評価法の標準化が課題に

 「再生医療」は21世紀の医療を象徴するキーワードの一つ。既に、関節軟骨の欠損修復については、骨髄液から分離・培養した骨髄間葉系細胞を用いる再生医療が臨床に応用され、一定の成績も得られつつある。7月26日のシンポジウム1「骨・軟骨疾患と再生医学」では、骨髄間葉系細胞を用いた再生医療について、基礎・臨床両面の最新知見が報告された。

 広島大学歯学部口腔生化学の加藤幸夫氏は、同氏らが確立した骨髄間葉系細胞の“超培養”技術を紹介。この細胞を用いた再生医療の対象患者は、わが国だけでも5000万人以上になるとの見通しを示した。

 再生医療の「材料」となるのは、人の様々な組織細胞へと分化誘導できる「万能細胞」だ。代表的なのは受精卵(胚)由来の胚性幹細胞(ES細胞)だが、骨髄液にも2種類の幹細胞(多分化能を持つ細胞)が含まれている。一つは、赤血球や白血球、マクロファージなどに分化する「血液幹細胞」。もう一つが、筋芽細胞、脂肪細胞、骨芽細胞などに分化する「間葉系幹細胞」だ。

 加藤氏らは、幹細胞のように多分化能を備えた間葉系細胞を骨髄液から分離し、未分化な状態のまま大量増幅する「超培養法」を確立。ウサギやビーグル犬を用いた動物実験で、軟骨欠損や歯周病の治癒が、培養細胞の移植で促進されることを確認した。さらに、世界初となる間葉系細胞の自動培養装置を開発、全国4カ所に細胞培養・保管センターを設置する「セントラル方式」での事業化に着手した。

 培養間葉系細胞移植の対象となる骨・軟骨疾患と患者数は、歯周病が3700万人、骨粗鬆症・骨折が1000万人、変形性関節症が300万人。心筋や神経への分化誘導ができるようになれば、心筋梗塞などの閉塞性動脈硬化症(50万人)や神経変性疾患(100万人)も適用対象となり、「5000万人以上の患者に適用できる」と、加藤氏は骨髄間葉系細胞の持つ再生医療材料としての潜在力の大きさを強調した。

 一方、信州大学整形外科の脇谷滋之氏は、実際に軟骨疾患患者に対して行った間葉系細胞移植の臨床成績を紹介。軟骨細胞移植など他の再生医療技術も含め、病態の解明や治療効果の評価法の標準化が課題となるとした。

 脇谷氏らは、保存療法ではどうしても痛みなどの症状が取れない変形性膝関節症患者24人に骨切り術を施行。うち半数には手術の際に培養自己骨髄細胞を移植し、臨床症状を比較した。その結果、術後には両群とも痛みや膝機能などのスコアが改善したが、統計学的には有意な差とはならなかった。ただし、細胞移植を行った群の方が組織の修復が早い傾向が認められた。

 軟骨欠損修復の基本的な手術法は、軟骨下骨に穴をあけ骨髄から出血させるというもの。出血した骨髄血に、軟骨細胞の前駆細胞やサイトカインが含まれており、修復を促進するとされる。そこからヒントを得て、自己骨軟骨移植、さらには培養自己軟骨細胞移植が行われるようになり、米国では後者が米国食品医薬品局(FDA)の認可を1997年に得て培養が商業ベースで行われるようになったという。

 培養自己骨髄細胞移植はその発展形だが、脇谷氏は「現時点ではあらゆる保存療法が無効だった症例に適応を絞るべき」と話す。最大の理由は、関節軟骨の修復能力、関節軟骨欠損の症状や欠損の自然経過といった軟骨欠損の病態が明らかにされていないこと。また、人では損傷部の修復度合いを侵襲的に評価するのは難しく、勢い臨床症状が評価の主体とならざるを得ない。脇谷氏は「病態や評価法が定まるまでは、(細胞移植は)将来関節機能が破綻する可能性が強いと考えられる軟骨欠損のみを対象にすべき」と述べた。

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