2002.07.24

リンパ節転移のない閉経後乳癌患者、ER陽性例ではTAM併用下での術後化学療法に再発予防効果なし

 リンパ節転移のない閉経後乳癌患者約1700人を対象とした無作為化比較試験で、腫瘍のエストロゲン受容体(ER)が陽性だった患者では、内分泌療法に化学療法を組み合わせても、内分泌療法単独の場合と5年生存率や5年無再発生存率が変わらないことが判明した。欧米ではこうした患者に術後化学療法と内分泌療法を併用するケースが多く、わが国でもこの併用療法が広まりつつあるが、実施にあたってはERの発現の有無を考慮する必要がありそうだ。研究結果は、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌7月17日号に掲載された。

 この研究は、国際的な乳癌共同研究グループ、IBCSG(International Breast Cancer Study Group)が実施した「IBCSG Trial 9」。1988年10月から1999年8月にかけて患者登録を行い、ERの陽性・陰性にばらつきが生じないよう調整した後無作為に2群に分けて、乳癌の切除後に、内分泌療法薬のタモキシフェン(TAM)単独、あるいは化学療法3コース施行後にTAMを投与する「内分泌・化学併用療法」を行った。

 対象患者の平均年齢は60歳で、23%はER陰性、73%はER陽性(4%は不明)。術式は乳房全摘術と乳房温存術がほぼ半々で、乳房温存術を受けた患者の9割は放射線療法を併用した。病期は1が17%、2が42%、3が35%で、6%は不明だった。こうした患者背景に、介入群によるばらつきはなかった。

 術後化学療法は28日を1コースとして計3コース実施。レジメン(抗癌薬の組み合わせ)には、シクロホスファミド、メトトレキサートとフルオロウラシルの3剤を併用するCMF療法を採用した。投与スケジュールは、シクロホスファミド100mgを第1〜14日に連日経口投与、メトトレキサート40mgとフルオロウラシル600mgを第1、8日に静脈内投与した(投与量はいずれも体表面積1m2当たり)。

 内分泌療法については、内分泌療法単独群にはTAMを1日20mg、60カ月連日投与。内分泌・化学併用療法群には、化学療法の終了後、同量のTAMを57カ月連日投与した。追跡期間の中央値は71カ月。

 その結果、ER陰性、つまり腫瘍がエストロゲン非感受性の患者382人では、内分泌療法単独群(190人)の5年無再発生存率は69%。これに対し、内分泌・化学併用療法群(192人)では5年無再発生存率が84%と、絶対値で15%、相対的に48%、有意に改善することがわかった(p=0.03)。5年総生存率も同様に、内分泌・化学併用療法群(89%)で内分泌療法単独群(81%)より相対的に49%有意に改善した(p=0.01)。

 ところが、全体の7割強を占めるER陽性患者1217人では、全く異なる結果となった。内分泌療法単独群(621人)の5年無再発生存率は84%だが、内分泌・化学併用療法群(596人)では85%で、両者に有意差は認められなかったのだ。5年総生存率も同様に、内分泌療法単独群が93%、内分泌・化学併用療法群が95%で、両群に有意差はなかった。

 乳癌の再発には女性ホルモンが密接に関与しており、腫瘍への女性ホルモンの働きを抑える内分泌療法は従来、閉経前の女性に対して行われてきた。その後、閉経後女性でも、腫瘍のERが陽性の場合は内分泌療法の効果があることがわかり、さらに化学療法の併用で、再発抑制効果が高まることが報告されてきた。

 ただし、「閉経後、ER陽性」の乳癌患者で、術後の内分泌・化学併用療法の効果が示されていたのは、実はリンパ節転移がある患者のみ。リンパ節転移のない閉経後乳癌患者を対象とした試験は今回が初めてだという。

 研究グループは「乳癌の術後に内分泌・化学療法を行う場合は、(リンパ節転移の有無やER陽性・陰性といった)患者背景に応じた個別の治療戦略を取るべき」と結論。リンパ節転移がなく、ERが陽性の閉経後患者に対しては、5年間の内分泌療法だけで十分であり、術後化学療法を併用する意義は認められないと強調している。

 この論文のタイトルは、「Endocrine Responsiveness and Tailoring Adjuvant Therapy for Postmenopausal Lymph Node-Negative Breast Cancer: A Randomized Trial」。アブストラクトは、こちらまで。

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