2002.07.20

【日本動脈硬化学会速報】 学会の「動脈硬化診療ガイドライン」、日本人集団への適用可否巡り議論

 7月19日午後に開催された「動脈硬化診療ガイドラインに関するコンセンサスカンファレンス」(座長:帝京大学内科・寺本民生氏、金沢大学大学院血管分子遺伝学・馬淵宏氏)では、日本動脈硬化学会の理事会・評議員会で了承を得たガイドラインの最終版が、初めて一般の学会員に対して説明された。説明後の質疑応答では、冠動脈疾患(CHD)の罹患率が低い日本人一般集団に対する脂質管理の妥当性など、ガイドラインの根幹をなす考え方に対する質問や意見が相次いだ。

 同学会が今回発表した「動脈硬化診療ガイドライン」は、1997年に発表された「高脂血症診療ガイドライン」の改訂版となるもの(関連トピックス参照)。冠動脈疾患の発症リスクを、危険因子の重積数に基づいてより細かに評価し、リスクに応じた脂質管理の重要性が強調されている。CHDの一次予防、つまりCHDの既往がない人(患者カテゴリーA、B)に対する脂質管理は、薬物療法ではなく生活習慣の改善を基本とすることが打ち出された点も大きな改訂点となった。

 しかし、日本人のCHD発症率は、欧米人の5分の1から10分の1程度。総コレステロール(TC)値や低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値を引き下げることが、はたしてCHD発症率、ひいては総死亡率の低下につながるのかも議論が残るところだ。

 この点に関し、フロアからは「成人病健診受診者を数千人規模で数年間追跡したデータからは、TC値とCHD発症との間に明確な相関は見出せず、TC値が高い群でむしろ総死亡や癌死亡が低い傾向が認められている」「日本人では、家族性高コレステロール血症(FH)患者や被爆者など“特殊な集団”でしか、コレステロールを下げることによるCHD発症予防効果は認められていない。そのデータに基づくガイドラインを一般集団に当てはめることはできないのではないか」といった意見が出された。

 これに対し、ガイドラインの概要を説明した高知医科大学第二内科の末廣正氏は「日本人でもコレステロールが高いとCHDが多いとのデータが多い」と回答。一般集団にガイドラインを適用することの妥当性については、「一般集団が治療対象となるわけではない。一般集団の中から、FHを含む脂質代謝異常者をスクリーニングし、CHD発症リスクに応じた治療を行うもの」と説明した。

 また、CHD発症率が低い日本人に脂質管理を行う妥当性に関しては、「CHD発症率の低さは民族として誇るべきことで、この頻度の低さを維持し、あるいはさらに下げることが本ガイドラインの目的」と末廣氏は述べた。

 このほか、ガイドラインの妥当性を巡っては、「1997年に旧ガイドラインが発表されてから5年が経過したが、動脈硬化性疾患の予防にガイドラインが役立ったとのデータはあるか」との質問も出された。座長の馬淵氏は「大変重要な点だが、おそらくデータは出していない」と回答。今後、ガイドラインの有効性に関する検証を進め、さらに良いガイドラインを目指したいと話した。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.19 日本動脈硬化学会速報】「動脈硬化診療ガイドライン」がついに発表、診断基準は旧来通りTC値220mg/dlに

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