2002.07.19

【再掲】【日本動脈硬化学会速報】 「動脈硬化診療ガイドライン」がついに発表、診断基準は旧来通りTC値220mg/dlに

 日本動脈硬化学会は7月19日、同学会が1997年に作成した「高脂血症診療ガイドライン」の改訂版となる「動脈硬化診療ガイドライン」の最終決定版を記者発表した。7月18日の評議員会で了承されたもの。昨年の学会総会で発表された当初案(関連トピックス参照)とは異なり、高脂血症の診断基準として、総コレステロール(TC)値に旧ガイドラインと同じ220mg/dlを採用した。

 昨年発表されたガイドライン改訂の原案では、「スクリーニングのための高脂血症の診断基準」として、新たに“境界域”という概念が提唱されていた。例えばTC値の場合、220〜239mg/dlを「境界域高TC血症」とし、240mg/dl以上を「高TC血症」のスクリーニング基準とする提案だ。

 しかし、本日発表された最終版では、この“境界域”という概念は採用されず、高脂血症の診断基準は旧ガイドライン通り「TC値220mg/dl以上、低比重リポ蛋白コレステロール(LCL-C)値140mg/dl以上、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値40mg/dl未満、トリグリセリド(中性脂肪、TG)値150mg/dl以上」となった。



 この理由について、ガイドラインの作成にあたった同学会動脈硬化診療・疫学委員会委員長の馬渕宏氏(金沢大学医学部長)は「臨床現場では“境界域”が無視される傾向がある。スクリーニングとしては(240mg/dlより220mg/dlを基準にして)幅広く取った方が良いとの結論になった」と説明。同学会理事長の松澤佑次氏(大阪大学大学院分子制御内科教授)は「(改訂の根拠として採用されたエビデンスには)スクリーニングの概念を変える根拠が乏しかった」と補足した。

患者カテゴリーの細分化は原案通りも、カテゴリー別管理目標値には相違

 一方、原案の基本コンセプトである「リスクに応じた管理目標値」の導入は、最終版にも活かされ、原案通りリスク別の患者カテゴリーは6段階に分けられた。しかし、カテゴリーごとの脂質管理目標値は、原案(当初案)や、2月の理事会で検討された修正案(関連トピックス参照)とは大きく異なったものとなった。

 最終版での脂質管理目標値は、TC値でカテゴリーA(冠動脈疾患なし、危険因子なし)が240mg/dl。カテゴリーB1とB2(冠動脈疾患なし、危険因子1〜2個)が220mg/dl、カテゴリーB3とB4(冠動脈疾患なし、危険因子3〜4以上)が200mg/dl、カテゴリーC(冠動脈疾患あり)が180mg/dlとなった。旧ガイドラインとの比較では、カテゴリーAと、カテゴリーB1、B2で、20mg/dlの目標値引き上げがなされている。

 カテゴリー評価に用いる危険因子には、加齢、高血圧、糖尿病、喫煙、低HDL-C血症と冠動脈疾患の家族歴が採用。旧ガイドラインで採用されていた肥満は外された。松澤氏は「肥満は確かに冠動脈疾患発症の危険因子だが、カテゴリーの重み付けという観点では、(血清脂質値など)肥満の下流にあるものを用いた」と理由を説明した。このほか、糖尿病がある場合はカテゴリーB3、脳梗塞や閉塞性動脈硬化症がある場合はB4とすることになった。

 なお、原案で「患者の個別リスク算定ツール」として提案されていた「J-LITチャート」は、最終版ではガイドライン巻末に「参考」として添付される形となった。馬淵氏はその理由を「(J-LIT研究が)論文として正式に発表されていないため」と説明している。これに呼応する形で、原案に示されていたカテゴリー別の相対リスクも最終版では提示されなかった。

 ガイドラインの最終版は、「1週間以内にホームページ上で発表する」(松澤氏)ほか、「動脈硬化性疾患診療ガイドライン 2002年版報告書」として9月中にも同学会から発行される見込み。一般向けの、動脈硬化性疾患予防の手引き書も、同時期に発行される予定だ。

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.6.11 再掲】日本動脈硬化学会速報】日本動脈硬化学会、「動脈硬化診療ガイドライン」を提案
◆ 2002.2.27 日本動脈硬化学会、高脂血症診療GLの改訂に遅れ

■お知らせ■
 ガイドラインの比較表を改めました。

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