2002.07.18

【日本動脈硬化学会速報】 スタチンの冠動脈疾患死予防効果に性差、プラセボ対照無作為化試験のメタ分析で判明

 脂質低下作用を持つスタチン系薬に、冠動脈疾患など心血管疾患の予防効果があることは、多くの大規模臨床試験で実証されている。しかし、その効果には性差があり、女性では有意な冠動脈疾患死の予防効果が示されないことが、プラセボ対照無作為化試験のメタ分析から明らかになった。千葉大学大学院薬学研究院医薬品情報学研究室の上島有加里氏らが、7月18日のポスターセッションで報告した。

 上島氏らは、心血管疾患の発症率や死亡率には男女差があるにも関わらず、スタチン系薬などの効果を男女別に解析した研究がほとんどないことに着目。代表的な医学論文データベースのメドラインから、スタチン系薬を用いたプラセボ対照盲検試験を抽出して男女別にメタ分析を行い、冠動脈疾患死に対する予防効果の性差を調べた。

 メタ分析の対象とした研究は、1.1996年1月から2002年3月までに論文発表、2.評価項目(エンドポイント)に冠動脈疾患死を含む、3.追跡期間が2年以上、4.患者背景とイベント数に男女別の記載がある−−の4条件を満たす10研究。うち4研究は対象患者が男性に限られており、試験対象に女性が含まれていたのは6研究だけだった。

 10研究のうち7研究は冠動脈疾患の1次予防、3研究は2次予防を目的としたもの。プールされた患者数は男性が約2万9000人、女性が約4000人。平均年齢は男性が56.4歳、女性が59.3歳だった。具体的な臨床試験名は、「4S」「CCAIT」「WOSCOPS」「REGRESS」「PLAC-I」「KAPS」「CARE」「CIS」「AFCAPS/TexCAPS」と「LIPID」。

 その結果、男性では相対的に31%、有意に冠動脈疾患死の予防効果があることが明らかになった(オッズ比:0.69、95%信頼区間:0.63〜0.76)。冠動脈疾患死を一人防ぐために何人を治療するかを表す「治療必要人数」(NNT)は、95人(95%信頼区間:69〜150人)となった。

 ところが女性では、スタチン系薬が冠動脈疾患死を相対的に19%防ぐとの傾向は認められたものの、オッズ比の95%信頼区間は0.63〜1.04と、統計学的には有意な差とならないことが判明。NNTは109人だが、95%信頼区間は−541〜49人と、こちらも統計学的には意味を持たなかった。

 この結果について、上島氏は「女性で有意差が出なかったのは、おそらく女性の分析対象者数が約4000人と少なく、心疾患罹患率や死亡率も男性より少なかったためではないか。症例数が増えれば、統計学的には有意な差となる可能性はある」としながらも、「女性で男性よりもスタチンの相対的な効果が小さいことに変わりはない」と指摘する。

 原因として、動脈硬化の病変形成機構や血管内皮機能、心筋機能などに男女差がある可能性もあり、「女性は男性ほど治療によって得られる利益が高くないことを鑑みると、女性における血中コレステロール値の治療目標値は男性より高く設定されるべき」と上島氏は分析。日本では、スタチン系薬を投与されている女性が男性の2倍以上いることから、薬物療法の見直しが医療経済に与える貢献も大きいとまとめた。

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