2002.07.17

変形性膝関節症の関節鏡下手術、症状の改善は「プラセボ効果」

 変形性膝関節症(OA)に対する関節鏡下手術の有用性は、どうやらプラセボ効果に過ぎないようだ。「偽手術」を対照とした比較試験で、2年後の症状改善度が、実際に手術を受けた人と変わらないことが明らかになった。関節鏡下手術は、薬物療法でも痛みの取れないOA患者の“救世主”としてわが国でも普及しつつあるが、対象患者の選定を含めた実効性を問い直す必要が出てきたと言えそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌7月11日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Houston退役軍人医療センターと米国Baylor医科大学の研究グループ。研究グループは、複数の臨床試験で関節鏡下手術がOA患者の症状改善に有用であると報告されているが、これらの試験では対照群が置かれていない点に着目。偽手術、つまり膝に切開は行うが関節鏡は挿入しない「プラセボ」群を設けた無作為化試験を行って、OAの症状改善に関節鏡下手術がはたして役立つのかを検討した。

 試験の対象は、薬物療法を最大限に行っても6カ月以上、中等度以上の痛みが続いている、75歳以下のOA患者。OAの重症度を4段階(軽症、中等症、重症、最重症)で評価し、最重症の患者は対象から除いた。介入方法は、1.関節鏡下郭清術(デブリドマン)、2.関節鏡下洗浄術(関節洗浄)、3.偽手術−−の3通り。施術は全て同一の整形外科医が行い、評価医師、患者の双方ともどの施術を受けたかがわからないようにした。

 3分の1の確率で「偽手術」を受けることになるこの試験では、当然ながら、参加を呼びかけられた患者の実に44%が協力を断った。参加者180人の平均年齢は52歳。退役軍人だけに9割が男性、6割が白人で、OAの重症度比率は軽症:中等症:重症がおよそ3:4.5:2.5。重症度にばらつきが出ないよう調整した上で無作為に3群に分け、2年後の症状改善度を比較した。

 その結果、3群とも、介入前と比べると主観的な膝の痛みや機能が2週間後に大きく改善し、2年後の時点でも当初よりは改善した状態に保たれていることが判明。しかし、偽手術を受けた群と、2種類の関節鏡下手術を受けた群との間には、統計学的・臨床的に意味のある差はみられなかった。一定距離の歩行時間など客観的な評価指標でも、3群間に差は認められなかった。

 米国における関節鏡下手術の医療費は約5000ドル(約58万円)で、年間65万人が手術を受け、大半はOA患者だという。研究グループは、「関節鏡下郭清術、関節鏡下洗浄術のいずれも、膝関節の痛みや機能に対する効果は偽手術を上回るものではない」と結論。こうした“無駄な”手術にかかる医療費は他に振り向けるべきだと提言している。

 この論文のタイトルは、「A Controlled Trial of Arthroscopic Surgery for Osteoarthritis of the Knee」。アブストラクトは、こちらまで。この件に関するBaylor医科大学のプレス・リリースは、こちらまで。

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