2002.07.16

スイスでCJDが急増、発症様式の異なる“狂牛病”の恐れも

 スイスでクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の報告例が、ここ2年間は例年の2倍となっていることが明らかになった。Lancet誌7月13日号で報告されたもの。狂牛病の牛から感染した新変異型CJD(nvCJD)とは臨床症状もプリオン蛋白の糖鎖パターンも異なるが、他に明確な発症・感染原因も見付からず、研究グループは「発症様式の異なるnvCJDである恐れもある」としている。

 この報告を行ったのは、スイス神経病理学研究所のMarkus Glatzel氏ら。CJDには大きく分けて散発型、遺伝型、医原病型(ヒト乾燥硬膜などの医療材料などから感染)の3種類がある。うち散発例は全世界的に均等に分布しており、発生率は人口100万人当たりおよそ一人とみられている。スイスでも報告数は毎年10人前後で推移してきたが、2001年に報告数が19人(うち18人は診断が確定)と前年の約2倍に急増。2002年も最初の四半期で7人と、さらに発生率が増える勢いとなった。

 2001〜2002年に報告された患者26人の平均年齢は67.2歳(48〜83歳)、発病から死亡までの罹病期間の中央値は3.1カ月と短く、これまでに英国などで報告されているnvCJDの発症パターン(若年発症し罹病期間が比較的長い)とは明らかに異なる。遺伝型のCJDにみられるプリオン蛋白遺伝子の変異が認められたのは一人だけだった。

 プリオン蛋白を蛋白キナーゼで処理し、電気泳動を行うと、糖鎖の付き方に応じた3本のバンドが現れる。CJDはこのバンドの位置や濃淡で1〜4型の4種に分類されるが、26人の患者にはnvCJDに特徴的な4型は一人も含まれておらず、17人は1または2型、9人は3型だった。

 これらのデータは、「過去2年間で急増した患者は、遺伝型の一人を除き散発型または医原病型で、牛から感染したnvCJDは含まれていない」ことを示唆している。しかし、散発型の急増は考えにくく、医原病の原因となるような医療行為も、これらの患者は受けていないという。

 Glatzel氏らは、ここ2年間の急増を説明し得る理由として、次の三つを挙げる。一つは、CJDに対する関心の高まりを反映して、これまで見過ごされていた散発型の発症例報告が増えたというもの。もう一つは、原因が特定されていない、医原性のCJDが増えているというものだ。

 残る三つ目の可能性は、これまでとは異なる発症様式を持つ、人畜共通感染症としてのCJDが増えているというもの。スイスでも狂牛病に罹患した牛が発生しており、牛から人への感染が起こる素地はある。この報告数の急増が、はたして新・新変異型CJDによるものなのか−−。今後も動向を注意深く見守る必要がありそうだ。

 この論文のタイトルは、「Incidence of Creutzfeldt-Jakob disease in Switzerland」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. アルツハイマー治療薬開発が進まない理由 理化学研究所神経蛋白制御研究チームシニア・チームリーダーの西道隆臣氏に聞く FBシェア数:172
  2. 57歳男性。両下腿から足背の浮腫と紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  3. 75歳女性。構音障害、左共同偏視 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  4. JCHO東京高輪病院で感染症内科医7人一斉退職 2017年4月から、ほぼ全科で土曜休診に FBシェア数:648
  5. コデイン類含有製剤、12歳未満は禁忌に まずは「重要な基本的注意」で注意喚起、2019年から全面禁忌 FBシェア数:292
  6. 酸素療法で飛んで行ったメガネ 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:101
  7. 広がる中学生のピロリ検診・除菌 ニュース追跡◎エビデンス乏しく副作用の懸念も FBシェア数:547
  8. 「救急医にはアイデンティティーがない」の呪い 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:69
  9. 末梢神経障害へのエパルレスタットに要注意 セキララ告白!個別指導 FBシェア数:74
  10. なんでこんな検査を定期健診に入れている? 記者の眼 FBシェア数:217