2002.07.08

ホルモン補充療法、冠動脈疾患の2次予防効果はやはり否定、骨折の予防効果もなし−−HERS2研究より

 冠動脈疾患(CHD)の既往がある閉経後女性を対象に、ホルモン補充療法(HRT)の“副効用”を調べた「HERS」(Heart and Estrogen/Progestin Replacement Study)研究の追跡研究「HERS2」の最終結果が、Journal of American Medical Association(JAMA)誌7月3日号に掲載された。HERS研究の参加者をさらに2.7年追跡したもので、先のHERS研究と同様、HRTによるCHD2次予防効果は否定された。さらに、CHD予防と同じくらい期待されていたHRTの副効用、骨折予防効果に関しても、プラセボ群との有意差は認められなかった。

 女性は閉経後、CHDの発症率が男性並みに高まり、骨粗鬆症も進行する。これは、女性ホルモンが心血管や骨代謝に対して保護的に働くためと考えられており、「HRTを行えば、更年期に伴う様々な症状を緩和できるだけでなく、副効用として冠動脈疾患や骨粗鬆症による骨折も予防できるのでは」との発想につながった。

 この発想に基づき、1993年に米国でスタートしたのが「HERS」研究。CHDの既往がある閉経後女性約2800人を無作為に2群に分け、一方に経口ホルモン薬(エストロゲンとプロゲスチン)、他方にプラセボを服用してもらい、およそ4.1年間追跡してCHDの再発率を比較した。参加者の平均年齢は67歳で閉経後18年が経過しており、9割が白人。半数に心筋梗塞の既往があり、4割は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、4割は冠動脈バイパス術を受けていた。

 結果は、全く期待を裏切るものだった。CHDイベント(非致死性心筋梗塞+CHD死)の発生率は、両群で全く変わらなかったのだ。しかも、最初の3年は、HRTを受けた群でCHDイベント発生率がむしろ高い傾向が認められた。

 ただし、3年が経過した後は、HRT群でCHDイベント率が下がる傾向もみられた。そこで研究グループは、「より長期的には、HRTでCHD予防効果が現れてくるのではないか」と考え、HERSの追跡研究であるHERS2を実施した。

 HERS2には、HERSの参加者のうち、生存していた人のほとんどが参加に同意した。HERS研究でホルモン薬とプラセボのどちらを服用していたかは、研究終了時に医師・患者双方に明らかにされ、HERS2研究ではHRTを受けるか否かは患者の自由意志に任された。しかし、HERSの結果(HRTを新たに始めるとしばらくはCHD発症率が高く、継続していると低くなる)を受け、もともとHRT群に割り付けられていた人の8割はHRTを継続。プラセボ群に割り付けられていた人でHRTを開始した人はいなかった。

 その結果、1次評価項目であるCHDイベント発生率のハザード比は、HERS2の追跡期間(2.7年)で1.00(95%信頼区間:0.77〜1.29)。HERSと併せた6.8年の追跡期間で評価しても、ハザード比は0.99(同:0.84〜1.17)となり、少なくともCHDの既往者に対しては、HRTにCHDイベントの予防効果が全くないことが明らかになった。

 一方の骨折予防効果に関しても、HERSと併せた6.8年の追跡期間でのハザード比は1.04(同:0.87〜1.25)となり、HRTを受けると骨折が減るとの根拠は得られなかった。発癌のハザード比は1.19(同:0.95〜1.50)、総死亡のハザード比は1.10(同:0.92〜1.31)で、両群に有意差はなかった。

 さらに、HERS研究と同様、HERS2研究でも、HRT群で深部静脈血栓症と胆道手術が多くなることが追認された。HERSと併せた6.8年間で、ハザード比は前者が2.08(同:1.28〜3.40)、後者が1.48(同:1.12〜1.95)となった。

 これらのデータが示唆するのは、CHDの既往がある閉経後女性にHRTを行っても、CHDや骨折の予防効果は期待できないということ。臨床現場ではこうした副効用がHRTのメリットとして患者に説明されることも少なくなかったが、大規模介入研究で否定的なエビデンスが得られた以上、最新の知見を患者への説明にも反映すべきだろう。

 なお、HRTによるCHD1次予防、つまりCHDの既往がない閉経後女性に対するCHDの新規発症予防については、まだ結論が出ていない。現在、「WHI」(the Women's Health Initiative)と「WISDOM」(Women's International Study of long Duration Oestrogen after Menopause)という、二つの大規模臨床試験が進行中で、結果は5〜8年後に出る見込みだ。

 HERS2研究のうち、CHD2次予防に関する論文のタイトルは、「Cardiovascular Disease Outcomes During 6.8 Years of Hormone Therapy」。現在、全文をこちらで閲読できる。骨折予防などに関する論文のタイトルは、「Noncardiovascular Disease Outcomes During 6.8 Years of Hormone Therapy」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

-->循環器スペシャルへ
-->整形外科スペシャルへ
-->プロフェッショナル・プログラムのトップページへ

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 画像診断報告書の確認漏れが起こる理由 リポート◎指摘の見落とし、連携不足、多忙など改善点は多く FBシェア数:144
  2. ヒドすぎる医療シーンに仰天「これが魔術か…」 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:4
  3. 今年の大学医学部入試の問題から(その1) 松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」 FBシェア数:1
  4. 梅毒かも、結果が出るまではエッチ厳禁で 井戸田一朗の「性的マイノリティの診療日誌」 FBシェア数:96
  5. 貯金?最悪!元本保証の呪縛から解き放たれよ Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:0
  6. 「落ちこぼれ研修医が後輩に対してメンツを保つには… 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:4
  7. 新専門医制度、8月の専攻医募集開始に向け運用細則… 大都市の5都府県は定員に上限 FBシェア数:54
  8. 息子が中学受験、それでも地方に転職した医師の決断 医師ヘッドハンティングの舞台裏 FBシェア数:7
  9. 近所で有名な「怖い看護師さん」の処遇に悩む 榊原陽子のクリニック覆面調査ルポ FBシェア数:2
  10. 医師国試の合格率は88.7%、大学別合格率は? 8533人の新医師が誕生、合格率は90%を切る FBシェア数:1837