2002.07.04

大腸癌の腹腔鏡手術、開腹術との無作為化試験で初の長期成績

 遠隔転移のない大腸癌患者約220人を対象に、腹腔鏡手術と開腹術とを無作為化比較した臨床試験の長期成績が、初めて報告された。中央値で約3年半の追跡で、癌関連死亡率が腹腔鏡手術群で3割有意に低いとの結果になった。生存率や癌の再発率も、腹腔鏡手術群で有意ではないものの低い傾向が認められた。腹腔鏡手術については、侵襲の少なさが評価される一方、癌の取り残しや郭清の不完全さによる癌再発リスクが懸念されていたが、今回の結果はこうした懸念を払拭するものとなりそうだ。研究結果は、Lancet誌6月29日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、スペインBarcelona大学外科部門のAntonio M. Lacy氏ら。対象患者は、1993年11月から1998年7月までに同病院を受診した大腸腺癌患者のうち、1.遠隔転移がない、2.腫瘍が肛門から15cm以上離れている、3.腫瘍が横行結腸にはない、4.隣接臓器への浸潤がない、5.腸閉塞がない、6.過去に大腸手術を受けていない−−との条件を満たした219人。Lacy氏らはこれらの患者を、腫瘍の部位に偏りが出ないよう調整した上で無作為に2群に割り付け、一方に腹腔鏡手術、他方に開腹術を行って、長期成績などを比較した。

 対象患者の年齢は、腹腔鏡手術群(111人)が平均68歳、開腹術群(108人)が平均71歳。癌の病期は腹腔鏡手術群で1期、開腹術群で2期がやや多い傾向があったが、有意差はなかった。試験登録時期による割り付けのばらつきもない。なお、腹腔鏡手術群で5人、開腹術群で6人に遠隔転移が認められたため、長期成績の解析対象からは除いている。

 手術時間は腹腔鏡手術群が平均142分、開腹術群が平均118分で開腹術の方が短い。逆に出血量(105ml対193ml)、経口摂取開始時間(54時間後対85時間後)、入院日数(5.2日対7.9日)術創感染や腸閉塞など手術合併症の発生率(13%対31%)などは、腹腔鏡手術群の方が少なかった。

 次に研究グループは、腹腔鏡手術群で27〜85カ月(中央値44カ月)、開腹術群で27〜85カ月(中央値43カ月)追跡した後、1次評価項目である癌関連死亡率を比較した。その結果、癌関連死亡率は腹腔鏡手術群が9%(10人)、開腹術群では21%(21人)となり、腹腔鏡手術群で相対的に32%有意に低くなった(p=0.03)。この差は周術期死亡率ではなく、癌の進行による死亡率によるものだった。

 2次評価項目である再発率(17%対27%)、総死亡率(18%対26%)も、腹腔鏡手術群で低い傾向が認められたが統計的な有意差はなかった。

 興味深いのは、病期別に分析した場合、癌関連死亡率や再発率、総死亡率のいずれも、病期3のみに有意差が認められる点だ。病期1〜2の、比較的早期の癌では、両群の長期成績はほぼ同等だった。

 このデータが示唆するのは、遠隔転移はないが、比較的進行した大腸癌では、腹腔鏡手術を行った方が癌の再発が少なくなるということ。これまで腹腔鏡手術では、癌の再発がむしろ多くなるとの懸念が持たれていたわけだが、今回の結果はまさに正反対の結果だ。研究グループも「全く予想外の結果」と表明している。

 病期3の大腸癌患者で再発率が低かった理由について、研究グループは「腹腔鏡手術は侵襲が少ないため、(癌の再発を防ぐ)免疫機能への悪影響が少ないのではないか」と推察。こうした点が、現在進行中の多施設共同試験でも追認されれば、「腹腔鏡手術は大腸癌の標準的な術式になり得る」と強調している。

 この論文のタイトルは、「Laparoscopy-assisted colectomy versus open colectomy for treatment of non-metastatic colon cancer: a randomised trial」。アブストラクトは、こちらまで。

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.1.21 大腸癌の腹腔鏡手術、患者のQOLは開腹術と大差なし

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